coolな企業システムはまだ先の話? マクロメディア

2004/2/21

 マクロメディアは「Macromedia MAX 2004 Japan」の開催2日目、「Macromediaテクノロジーがもたらす近未来デジタル体験」と題する基調講演を行った。舞台上には“近未来”のリビングルームを思わせるさまざまなデジタル家電を置き、Flashがアプリケーション開発だけでなく、カーナビゲーションのインターフェイスやPCの製品デザインに応用されていることを提示。またウェアラブル・コンピューティングの最新研究成果なども織り交ぜながら、コンピュータによる新しいコミュニケーションの可能性を示した。

マクロメディア CTO 田中章雄氏と“近未来”のリビングルームを思わせるステージ

 「FlashはWebアプリケーション以外にも、カーナビや電子書籍、PDA、携帯電話、学習用ソフトなどさまざまな分野に応用されており、開発者・デザイナーの創造力を存分に発揮できる」(マクロメディア CTO 田中章雄氏)。そのために同社が今後提供していく製品は、デザイナー、開発者双方が互いの得意分野を生かしてリッチインターネット・アプリケーション(RIA)を開発できるように機能の充実を図るという。また会場でWebアプリケーション・サーバ「ColdFusion MX6.1」の次期バージョンの画面を提示し、コードのPDF出力など新しい機能の一部を紹介した。

 続く午後のセッションでは、ビジネス・アーキテクツ Chief Creative Officer兼Creative Directorの福井信蔵氏が、デザイナーの立場からエンタープライズ向けRIAの開発事例を紹介。DIY生命の保険シミュレーションサイトを紹介しながら、実際の開発プロジェクト体制や従来のアプリケーションモデルとの対比を示した。

 「RIAは、エンドユーザーに過不足ない使い勝手を提供しビジネスを加速させるもの。従来のWebアプリケーションで不足している部分を明らかにし、新たな価値をプロジェクトメンバー全員で設計・実装する体制を整えることが、RIA開発のキーとなる」(福井氏)。実際のDIY生命のプロジェクトでは、ユーザー企業とビジネスコンサルタントが「どんな収益モデルを考えているか」「そのためにWebアプリケーションには何が必要か」といったマーケティング面の設計を十分に行ったことで、その後のシステム開発がスムーズに行われたという。

 アプリケーションのアーキテクチャとしては、Webサーバ上に基本のビジネスロジックを搭載することでクライアント側の負荷を軽減。また以前のシミュレーションサイトでは、画面上に表示するグラフ図の生成をすべてサーバ側で処理させていたが、RIAインターフェイスを用いることで、サーバ処理の高速化を図った。これによりエンドユーザーはストレスを感じることなく、保険シミュレーションを実行できるようになり、保険の申し込み件数なども実際に増えているという。

 RIAの可能性はWebサイト以外にもある。例えばメインフレーム上にあるレガシーアプリケーションのインターフェイスにRIAテクノロジを適用することで、従来の使い勝手を損なうことなくオープン環境に移行できるほか、PDAや携帯電話などPC以外のデバイスからでも利用できるようになる。ただし「RIAだからといって、cool siteのようなデザイン性に優れた企業アプリケーションが出てくるわけではない。まず『エンドユーザーにどのような価値を提供すればリターンが得られるか』というROIありきで既存アプリケーションを見直し、必要な部分をRIA化していくことが必要だ」(福井氏)と締めくくった。なお、ビジネス・アーキテクツは「RIAコンソーシアム」発起人の1社であり、企業ブランディングやマーケティング戦略を考慮してWebサイトの開発を請け負っている。

(編集局 岩崎史絵)

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