シスコが提言、「サービスプロバイダにもSLAを」

2004/2/27

 米シスコシステムズ CoreIP Cisco Fellowのフレッド・ベーカー(Fred Baker)氏は、シスコシステムズが主催するセミナー「Next Generation Network seminar 2004」で2月26日に講演し、ネットワークでさまざまなサービスを提供するプロバイダに対して、「慣れていない分野にも進出する必要がある」と指摘、「サービスプロバイダはさまざまなサービスをタイムリーな形で、SLA(Service Level Agreement:サービス品質保証)に基づき提供することが求められている」と述べ、サービスプロバイダの今後の方向性、シスコの技術動向について説明した。

米シスコシステムズ CoreIP Cisco Fellowのフレッド・ベーカー氏

 ベーカー氏が説明したサービスプロバイダとは、インターネットアクセスを提供する通信キャリアやISPなどを指す。ベーカー氏はサービスプロバイダについて、「伝統的に1秒当たり何ビット提供しましょうという帯域幅の商売をしてきた」と説明。一方で、インターネットで利用するアプリケーションがWebサイトや電子メールから、IP電話やビデオストリーミング、PtoPでのファイル共有などへと拡大することで、サービスプロバイダもネットワーク上のアプリケーションを重視する方向に向かっているという。しかし、インターネットを利用した新しいアプリケーションの広がりはサービスプロバイダが提供する帯域幅を確実に圧迫する。そのため「サービスプロバイダが他社と差別化するには、SLAに基づくサービス提供が重要になる」というのがベーカー氏の考えだ。

 ベーカー氏が示した資料によると、あるサービスプロバイダはバックボーンのうち、80%以上をファイル共有ツールのトラフィックが占めているという。サービスプロバイダにとっては、Webサイト閲覧や電子メールなどほかのトラフィックに悪影響を与え、ユーザーのサービスレベルが損なわれる危険があり、「怖い状況」(ベーカー氏)となっている。この状況に対してシスコが検討しているのは「個々のユーザーやアプリケーションの帯域幅をコントロールできないか」ということ。具体的には「TCPにかなり注目している」といい、TCPのビヘイビアを見てトラフィックの非効率を修正することで「より予測可能なサービスができないか」などの技術を検討しているという。

 ベーカー氏は「サービスをCPE(Customer Premises Equipment:顧客内設備)から改善することで、サービスプロバイダが提供するサービスをよりよくできないか」とも語っており、家庭やオフィスに設置するモデムやルータでTCPを最適化することで、トラフィックの挙動をコントロールする技術を研究しているようだ。ベーカー氏は「シスコは今後このような方向に向かって進んでいく」と強調した。

 ネットワークで利用されるアプリケーションを想定したサービスの提供では、どのようなアプリケーションが使われているかの確認がまず必要になる。アプリケーションを確認することで、利用状況に合わせてトラフィックをコントロールできるからだ。ベーカー氏は、IP電話やWebサイト、電子メール、ファイル共有などで利用されるトラフィックのパケットサイズをチェックすることで、アプリケーションのシグネチャを確認し、ユーザーの利用動向を分析できると説明した。そのうえで、ベーカー氏は「個々の顧客を見る分散型のコントロールが必要になる。ネットワークのエッジに目を向けることが重要だ」と指摘。「ルータの中で必要な情報を処理できるか、SLAを個々のユーザーに適用できるか、コントロールに必要な情報をエッジルータ、CPEに入れられるかを検討すべきだ」と述べた。

(編集局 垣内郁栄)

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