シーベル、金融機関の顧客対応状況をしかる

2004/3/13

 CRMパッケージベンダ最大手の米シーベルは3月11日、「日本および太平洋地域におけるリテール・バンク上位100社の商談管理と営業効率」についての調査結果を発表した。米シーベル アジア・パシフィック&ジャパン カスタマー・ストラテジー担当ディレクターのダン・ボグナー(Dan Bognar)氏は、「ほとんどの金融機関で顧客からの問い合わせを収益につなげる“アクション”が取られていない。そして、金融機関自身がこの問題に気付いていないことが最大の問題である」と述べた。

米シーベル アジア・パシフィック&ジャパン カスタマー・ストラテジー担当ディレクター ダン・ボグナー氏

 この調査は、日本やオーストラリア、香港、韓国などアジア・太平洋の主要8カ国の銀行やクレジットカード会社を対象に実施された。調査方法は、調査員の名前を明かさず電話と電子メールで対象企業に接触する「匿名購入者」方式で、(1)サービス問い合わせへの対応、(2)より付加価値の高い商談に移行させる可能性、(3)顧客情報の活用状況、(4)フォローアップ、(5)顧客満足度などを評価。

 具体的には、「定期預金の詳細(利息、手数料、最低額など)」と「クレジットカードの詳細(年率、カード手数料など)」を電話と電子メールによって問い合わせた。この結果、日本国内の金融機関の88%は「顧客の連絡先詳細を積極的に入手した」とし、アジア・太平洋地域全体の47%に比べ高い数値を示した。また商品の詳細についても、100%の企業で正確な情報を顧客に提示するなど、各国に比べ問い合わせ時の顧客対応は高評価だった。

 ただし、電子メールと電話という異なるチャネルで顧客識別が行われている割合はわずか1%に過ぎず、「ほとんどの金融機関でチャネル統合が進んでいない」という結論に達した。そのほか、問い合わせ電話を商談につなげるための積極的なフォローアップを実施した企業は4%(全体では1%)、別の金融商品のクロスセル/アップセルを実施した企業は29%(全体では15%)だった。「収益機会をロスしている金融機関が71%もあるということだ」(ボグナー氏)

 以上のことから、「問い合わせに対する情報活用は高レベルだが、見込み顧客を収益に結び付けるリードマネジメント(商談管理)が確立されておらず、具体的なアクションにつながらない」(ボグナー氏)と問題を指摘。同氏によると、顧客データベースの構築や単一チャネルにおけるCRMパッケージの導入など、初期投資は一巡しているが、ほかのチャネルへの横展開やリードマネジメントなど「収益構造を改善していく余地はかなりある」(同氏)とした。

 こうした問題の背景として、サードパーティのチャネルやコンタクトセンターのアウトソーシングが台頭していることが挙げられる。人件費の安い地域にコンタクトセンターを委託構築することで、金融機関本体との情報連携がうまくできず、顧客情報や案件情報の一元化が実現できていないという。「そうかといって、金融機関本体ですべて抱え込むと膨大なコストがかかってしまう。そのためシーベルとIBMでは、『Siebel CRM OnDemand』というホスティングCRMサービスを米国で展開している。

 これは月額でCRMの基本機能が利用できるサービス。日本でも今夏サービス開始を予定しているが、こうしたソリューションを利用することにより、アウトソーシング先と金融機関本体とで安価に情報共有ができるようになる」(ボグナー氏)と述べる。また、「CRMパッケージを利用することで、こうした情報共有のほか、営業成績や顧客1人当たりのパフォーマンスを分析することにより、自社の顧客対応状況の課題が明らかになる」(同)とも語る。

 問題は、当の金融機関自身がまだ「自社の顧客対応に改善の余地がある」と気付いていないこと。この点についてボグナー氏は「収益構造の課題を指摘していくのも、ベンダの役割の1つ。今回の調査はアジア・太平洋地域で初の試みで、国別の調査結果を当社のWebサイトで公開している。まずはこうした結果を基に、自社のパフォーマンスを他金融機関と比較し、問題点を認識してほしい」と述べた。なお、「同様の調査を他業種でも展開していきたい」としており、今後も“企業への提言”を積極的に行っていく姿勢を見せた。

(編集局 岩崎史絵)

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