2週間、200万円で構築、IBMが“グリッドお試しサービス”

2004/3/16

 日本IBMは高速処理を必要とする情報システムを2週間でグリッド・コンピューティングに対応させたうえで、ユーザーがグリッドを利用しやすいポータルサイトを構築する「IBMグリッドポータル構築支援サービス」の提供を開始したと3月15日発表した。グリッド構築に関するソフトやコンポーネントをパッケージ化したことで短期間での構築を可能にした。最小構成の参考価格は200万円で、IBMでは「グリッド・コンピューティングを手軽に始めたい顧客企業に最適」としている。

日本IBM 執行役員 基礎研究&エマージングビジネス担当 岩野和生氏

 新サービスは、ライフサイエンスや製造のデータ解析、金融のポートフォリオ管理、データマイニングなど高速処理が必要な業務向け。IBMが開発したグリッド・ポータル・アプリケーション「Grid System Gateway」を中核に、業界標準のグリッド構築ミドルウェア「Globus Toolkit」、ネットワーク上のコンピュータ・リソースを仮想的に統合するスケジューラーなどを組み合わせて、顧客企業のシステムをグリッド化する。

 新サービスが提供するのは、ネットワーク経由で複数プロセッサのリソースを統合し、高い計算能力を実現するプロセッシング・グリッド。解析などの科学技術計算の処理時間を短縮できる。業務に利用されていないサーバのプロセッサをグリッドで統合することで、システム全体の稼働率を高めることもできる。Grid System Gatewayを使ってポータルサイトを構築することで、グリッド化したシステムへのWebブラウザによるシングルサインオンや、ユーザーによるジョブの投入、管理の容易性を向上させる。

 IBMはこれまでも企業システムのグリッド化を行うサービスを展開してきた。これまでの開発期間は約3カ月だったが、必要なコンポーネントなどをパッケージ化し、「手作りの経験値を集約した」(日本IBM 執行役員 基礎研究&エマージングビジネス担当 岩野和生氏)ことで2週間という短期間の開発を実現した。2週間のうち、最初の3日で顧客の要件や導入環境の確認など事前コンサルティングを行う。次の5日で実際のポータル導入や設定、グリッド化するノードの設定、テストなどを行う。その後、電子メールでのサポート支援を行い、約2週間で稼働まで持っていくという。新サービスを導入するには分散処理ができたり、データを細切れにして解析できるなどグリッドに適したアプリケーションを使っていることが前提となる。グリッド化することでアプリケーションが効果を発揮できるかどうかも、事前コンサルティングで検証する。

 新サービスは最小構成の参考価格を200万円に抑えたのも特徴。コンサルティングや設定などエンジニアの作業が100万円で、Grid System Gatewayのライセンスが100万円。日本IBMの技術 テクニカル・コンピテンシー 先進技術推進 担当 中川恵太氏によると、新サービスはTomcat、Struts、MySQLなどオープンソースのミドルウェア上に構築するのが基本。もちろん、IBMのWebSphereやDB2でグリッドを構築することも可能だが、オープンソースのミドルウェアを活用することで初期投資コストを下げて、顧客企業がグリッドを始めやすいようにした。IBMは同日、理化学研究所のグリッド・ポータルサイトを構築したことも発表している。

 岩野氏はグリッドについて「コンポーネントをダイナミックに連携させるときのインフラになる」と説明。「プロセッシング・グリッドからデータ・グリッド、コマーシャル・グリッドへの進化する過程で、IBMが提案するオートノミック・コンピューティングによるサービスレベル管理やセキュリティの機能が必要になる」と指摘し、「グリッドとオートノミックの融合が重要になる」と強調した。

(編集局 垣内郁栄)

[関連リンク]
日本IBMの発表資料(2週間でグリッド)
日本IBMの発表資料(理化学研究所事例)

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