IP電話主流の時代まであと3年

2004/3/26

 7月1日を期日に、パワードコムの電話事業がフュージョン・コミュニケーションズに統合される。2月27日に両社の間で基本合意に至り、3月25日、両社および両社の筆頭株主である日商エレクトロニクスの3社間で最終合意に達した。携帯電話の普及やブロードバンド化の浸透によるIP網の発展など、従来型の電話市場が大きな変革を迎えている。固定電話のトラフィックは年々減少し、NTT東西のアクセスチャージが値上がりすることで、パワードコムのような中継電話業者の収益が著しく圧迫される結果となっていた。今回の電話事業統合発表は、固定電話市場が完全に転換点を迎え、IPベースのサービスに移行したことの象徴的な出来事ととらえられる。

 パワードコムとフュージョンの電話事業統合に関する協議は、2003年11月18日に行われた記者会見ですでに明らかにされていた(パワードコムとフュージョンが電話事業の統合を検討)。その場で発表されたパワードコムの2003年9月期中間決算は、経常損失72億円の赤字であった。IP電話サービスを主軸とした音声コミュニケーション事業の建て直しを図ることで、統合初年度(2005年3月期)に売上高約780億円、営業損益約27億円の赤字、経常損益約35億円の赤字にまで“回復させる”見込み。統合2年目(2006年3月期)には、黒字化を目指す。すなわち、売上高995億円、営業損益約30億円の黒字、経常損益約21億円の黒字だ。

 統合後2〜3年は、従来の中継電話サービスが収益基盤であり続けることを見込む。つまり、売り上げの7〜8割は同サービスが占めるだろうが、3年目以降、中継系の売り上げは減少し、加入系IP電話の増加によって、売り上げを伸ばす予定である。その結果、統合2年目の単年度黒字、3年目のIPOを目指し、売上高1000億円レベルの通信会社になる、というシナリオが描かれている。

 では、統合後の中継電話サービスはどうなるのか。2〜3年の“命”とはいえ、将来的なIP電話サービスへの移行を見越したうえで、既存顧客をつなぎとめておく必要があるのはいうまでもない。フュージョンの電話サービスは、市外通話で価格競争力を誇るが、これにパワードコムの「東京電話」の強みである安価な市内通話料金と同等の料金を導入することを検討している。また、固定電話から携帯電話への通話サービスの提供でトラフィックが減少傾向にある同サービスでの利用単価向上を図る。この結果、市内通話は平日昼間3分間が8.4円、県内市外が10円、県外全国一律20円という料金設定を予定している。

 その後、既存固定電話サービスを光ファイバ上のIP加入電話サービスに完全に置き換える。固定電話サービスで提供していたサービスを基本セットとし、さらに付加価値の高いサービス、すなわち、無線LAN環境におけるIP電話サービスの提供やテレビ電話、テレビ会議システムなどを提供していく。

 加えて、従来フュージョンが強みを発揮していた中小規模企業に加え、パワードコムがメインターゲットとしていた大規模企業および個人市場のカバーも可能となる。いわば、全方位の市場戦略が実現するわけだ。

[関連リンク]
フュージョン・コミュニケーションズとパワードコムの発表資料

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