[IDF Spring 2004 Japan開催]
WiMAXなど無線ネットワークへの注力を強めるインテル

2004/4/8

 インテル主催の開発者会議「Intel Developers Forum(IDF)Spring 2004 Japan」が、4月7〜8日の2日間にわたって開催中だ。例年であれば2004年2月にインテルが米国で開催したIDFのサマリーが中心となるが、今年3月に発表された技術情報の最新アップデートを受ける形で、いくつか発表内容に変更が加えられている。

無線ネットワークへの傾注を進めるインテル

米インテル主席副社長兼コミュニケーションズ事業本部長 ショーン・マローニ氏

 基調講演のトップバッターとして戦略全般の発表を行ったのは、米インテル主席副社長兼コミュニケーションズ事業本部長のショーン・マローニ(Sean Maloney)氏。全体の概要を説明しつつも、特に近年急速に拡大する無線ネットワークへの同社の取り組みが中心となった。

 同氏は、Centrino登場とともに近年急速に拡大しつつあるWi-FiによるPCのインターネット・アクセス環境と、データ通信/処理機能を備える携帯電話の広がりに言及し、無線データ・アクセスの重要性を説いた。その中で、いかなる地理的条件においてもインターネットにアクセスできる手段があるべきであり、各種の無線ネットワーク技術を互いに共存させ、同時に利用できる環境を用意する必要があると説明する。例えば、都市の街中のホットスポットでは無線LANの利用が可能だが、都市から郊外へと移動すると、携帯電話などでしかネットワークには接続できなくなる。これらをシームレスに接続させるには、複数の異なる無線テクノロジが必要になると説く。

 マローニ氏は「半径10m未満の近距離」「屋内」「屋外〜数十km」「数十km以上」と4つのエリアごとに、それぞれ「UWB/Bluetooth」「Wi-Fi(IEEE 802.11a/b/g)」「WiMAX」、それに「3G」の4種類の技術を当てはめた。これらは互いに競合する技術ではなく、適材適所で自由に使い分けられるべきであると説明した。

 この考えは同社の無線ネットワーク戦略で何度も登場しているが、今回は「Zoar」と呼ばれるマルチバンド型携帯電話のコンセプトモデルを提示した。Zoarは、GSM/GPRS、Wi-Fi、Bluetoothの3種類の無線技術をサポートし、Windows、Symbian、Linux、Palmの4つのOSを搭載可能だという。同社は今後、100Mbpsクラスの近距離通信を実現するUWB、最大70Mbpsで30マイル(約48km)まで到達可能なWiMAX、第3世代携帯電話技術の中でもWideband CDMAを中心に、機器への組み込みを実践していくという。

 注目したいのは同社のWiMAXへのスタンスだ。WiMAXは、ブロードバンド環境の遅れている国のラスト・ワン・マイル問題を解決するソリューションとして注目を集めている。同社も欧米を中心にラスト・ワン・マイル向け技術としてのWiMAX、つまり基地局と各家庭の屋外などに設置された固定アンテナ間を結ぶ無線技術を積極的に推進している。

 第2世代WiMAXと呼ばれる技術では、アンテナが小型化してノートPCなどへの内蔵が可能になるといわれている。本来であれば、ブロードバンド先進国の日本で第1世代WiMAXはあまり必要とされていない。だが、同社が日本で積極的にプレゼンテーションを行い、マルチバンド型無線アクセスを推進する様子を見ると、Wi-Fiと3G携帯電話のちょうど中間を埋めるようなソリューションとして、日本でもWiMAXを推進したいと考えているようだ。同社によれば、今後5年間で世界の10億人がこうしたサービスを利用可能になるとしている。

相次ぐプロセッサ戦略の変更

 米インテルは2004年2月のIDFでXeonの64bit命令拡張について正式発表を行い、Itanium一本だった64bit戦略を大きく転換した。その後、3月に入り、さらにCPUに関して大きな戦略転換を発表した。

 CPUへのプロセッサ・ナンバーの採用だ。従来までのPentiumやCeleronといったブランド名とクロック周波数による表記に加えて、3けた数字のプロセッサ・ナンバーが5月以降に併記される。インテルでは、5月に発表予定の次世代Pentium M(Dothan)に700番台の番号を、デスクトップ/ノート両方のPentium 4に500番台の番号、デスクトップ/ノート両方のCeleronに300番台の番号という形で、CPUの製品ラインを3つに分けてプロセッサ・ナンバーを付与する。番号の下2けたは性能に応じてランク分けされることになり、例えば722のプロセッサ・ナンバーを持つCPUは、712よりも高性能になるという仕組み。

 このような番号表記は、すでにAMDが先行して採用している。AMD側では、実際のクロック周波数と性能に開きがあるとして、プロセッサにはクロック周波数の代わりに、同程度の性能を持つPentium 4のクロック周波数をモデル・ナンバーとして表記している。

米インテル副社長兼モバイルプラットフォームズ事業本部長 アナンド・チャンドラシーカ氏

 インテルのPentium Mを重視する姿勢は、CPUのロードマップに表れている。米インテル副社長兼モバイルプラットフォームズ事業本部長のアナンド・チャンドラシーカ(Anand Chandrasekher)氏は、低電圧版Pentium M-1.3GHz、超低電圧版Pentium M-1.1GHz、Celeron M-1.4GHz、超低電圧版Celeron M-900MHzの4つを発表し、5月に登場予定の次世代Pentium M(Dothan)と2004年後半に登場予定のSonomaプラットフォームが、モバイル環境を大きく推進することになると説明した。Sonomaはいわゆる、次世代Centrinoのコード名であり、「LaGrande」「Vander Pool」と呼ばれるインテルの次世代プロセッサ技術をサポートする予定となっている。同社では、現在Pentium 4が中心のノートPCの世界が、2004年内には特にアジア太平洋地域を中心にCentrino(Pentium M)ベースを中心としたものに変わっていくとしている。

(鈴木淳也)

[関連リンク]
インテル

[関連記事]
「インテルをUターンさせた」、サンとAMDが提携効果を強調 (@ITNews)
未来はすべてはシリコンで実現する (@ITNews)
「64ビット機能拡張の話は別の機会に」、インテル (@ITNews)
HPが32/64ビット互換プロセッサ採用、Itaniumの呼び水に (@ITNews)
ムーアの法則≠パフォーマンス向上? インテルの次世代プロセッサ戦略 (@ITNews)
インテルが待つ「ItaniumがXeonを超える日」 (@ITNews)

情報をお寄せください:



@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)