マイクロソフト古川享氏、定年退職までの10年間にやること

2004/4/23

米マイクロソフト バイスプレジデント兼マイクロソフト 執行役 最高技術責任者 古川享氏

 2000年に米マイクロソフトのコンシューマ戦略担当 バイスプレジデントに就任して以来、4年間を米国勤務で過ごした古川享氏が2004年2月から米マイクロソフト バイスプレジデント兼マイクロソフト 執行役 最高技術責任者として日本に復帰した。「マイクロソフトを辞めたと思っている人が意外に多いのは驚きだ」という古川氏が今後担うのは、製品開発や販売、マーケティングといった直接的な企業活動ではなく、マイクロソフトの将来ビジョンの発信や業界を超えたパートナーシップの強化、人材育成など、いわば社会貢献に近い活動を中心に展開していくこと、である。

 「技術企画室」という特別部署を設置し、「イノベーションの推進」「他業界との幅広い連携」「パートナーとの技術連携」「産学連携」「Seamless Computing ビジョンの普及」といった活動を展開していく。とはいえ、例えば、イノベーションの推進という活動に関して、実際には何をどのように行うのか。一見、非常に曖昧模糊(あいまいもこ)とした古川氏の新たな“任務”だが、実はこの任務こそ、マイクロソフトのような社会的に強い影響力を持つ企業が企業活動を展開するうえで、欠かすことのできない役割を担っている。特に、IT業界ほど、現代の社会を支える基盤技術に成長しながらも、いまだに技術偏重傾向が突出した業界はない。古川氏が担当するのは、このような高度に複雑化したInformation Technology群の存在を利用者に気付かせなくすることだと要約してもいい。

 「デジタルカメラを例に挙げる。一般の利用者は、デジタルカメラで撮影したデータがどんな圧縮規格を採用しているかなんて考えたくもないはずだ。データをパソコンに転送するのに、USBケーブルを使うのか、カードリーダーを使うのか、そんなことさえも考えたくないと思う。そもそもデータの存在さえ知らなくてもいいはず」と古川氏は説明する。IT業界で通用する術語を使えば、相互運用性(インターオペラビリティ)をいかに確保するか、ということだ。インターフェイスを標準化し、データの圧縮規格を標準化し……、というさまざまな技術の標準化にかかわる仕事である。あるいは、アクセシビリティの向上という観点からも重要な仕事が山積する。「新たに操作を覚えなくても使いこなすことができる製品の開発」(古川氏)ということで、現在のITデバイスの複雑な操作性はこのような理想には程遠い。

 マイクロソフト1社で実現できる問題ではないことは明らかだ。他業界との連携や産学連携という仕事は十分な存在意義を持っているが、非常に困難な作業であることも想像できる。サン・マイクロシステムズとの和解、EUにおける訴訟などマイクロソフトをめぐるさまざまな問題は、今後もなくならないだろう。古川氏の抜群のプレゼンテーション能力と行動力は日本法人のみならず、マイクロソフト本社にとっても“切り札”といえる要素なのかもしれない。

(編集局 谷古宇浩司)

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