Windowsクローンに向かうターボリナックス

2004/4/28

 ターボリナックスは、米マイクロソフトからWindows Media Formatコンポーネントのライセンス供給を受け、Linux上でWindows Mediaフォーマットの映像や音楽を再生できる「Turboメディアプレーヤー」を開発したと4月27日に発表した。ターボリナックスはTurboメディアプレーヤーを搭載したコンシューマ向けLinux OSの新製品「Turbolinux 10 F...」を5月28日に発売する。Turboメディアプレーヤーの単体販売はしない。

「Turboメディアプレーヤー」を搭載した「Turbolinux 10 F...」のインターフェイス(クリックで拡大します)

 Turboメディアプレーヤーは、ターボリナックスが推進するデスクトップLinuxの「Windowsability」(Windowsっぽさ、ターボリナックス 代表取締役社長 矢野広一氏)を補強するために開発された。TurboメディアプレーヤーはKDEの標準メディアプレーヤー「Kaffeine」のフレームワークを採用し、「xine」マルチメディアプレーヤーをエンジンとして使用する。Windows Mediaフォーマットを再生するためのデコードライブラリを、xineのプラグインとして利用。Windows Media 7や8に対応する。最新版のWindows Media Audio 9 Professionalなどは再生できない。ターボリナックスのクライアントグループ プロダクト・マネージャ 久保和広氏よると、マイクロソフトに支払うライセンス費用とTurboメディアプレーヤーの開発費の合計は約1000万円に上る。

 Turbolinux 10 F...は2003年10月に発売したクライアントPC向けLinux「Turbolinux 10 Desktop」にTurboメディアプレーヤーや、MP3とRealAudio/Videoを再生できる「RealPlayer」、Macromedia Flashの再生機能、Javaアプレットの機能などを追加した。「PowerDVD for Linux」によるDVDの再生機能、アップルコンピュータのiPodと接続できる機能もある。2004年3月にターボリナックスを買収したライブドアの代表取締役社長 堀江貴文氏は「これまでデスクトップLinuxで弱かった映像再生にTurbolinux 10 F...が風穴を開けた」と胸を張る製品だ。

ターボリナックスのクライアントグループ プロダクト・マネージャ 久保和広氏。映像機能を強化した製品の発表だけに会見は都内の試写室で開催。久保氏は映画のアカデミー賞にちなんでタキシード姿で登場した

 Turbolinux 10 F...の税込価格は1万6590円。10 Desktopを購入したユーザーには7140円で10 F...にアップグレードできるようにする。ターボリナックスによると、10 Desktopは発売半年で2万本を販売。10 F...でも同じ程度の年間4万本を目標にする。

 久保氏はマイクロソフトに批判的なLinuxコミュニティを意識し、「マイクロソフトのソフトを利用することは賛否両論があるかもしれない。ただ、われわれはユーザーサイドの考えで、ユーザーが欲しいのであれば探して実装するだけ。その答えが10 F...だ」と述べた。確かにWindowsの代替を追求するためにはWindows Mediaのサポートは必須だっただろう。

 しかし、クライアントPC向けLinuxがWindowsと同じ方向を向き、同じ機能を搭載するクローンになることが正しいかどうかは別の議論だ。ターボリナックスの矢野氏は「クライアントの世界でWindows以外が定着するのは不可能と思われるかもしれない。10 F...は不可能を可能に変える第一歩になる」と述べるが、Windowsのクローンを目指すだけでは、明るい未来があるようには思えない。ユーザーが求めるのはWindowsの機能を搭載したうえで、Linuxにしかできない機能を豊富に備えたデスクトップ環境ではないだろうか。

(編集局 垣内郁栄)

[関連リンク]
ターボリナックスの発表資料 (Turbolinux 10 F...)
ターボリナックスの発表資料 (Turboメディアプレーヤー)

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