新潮流はディスク to ディスクのバックアップ、EMC

2004/5/12

 EMCジャパンはバックアップ専用のディスク・ストレージ「CLARiX Disk Library」を5月11日に発売した。既存のテープ・ライブラリの環境をエミュレートする機能があり、システムを変更せずに置き換えられるのが特徴。EMCではコストをかけることなくテープ以上の高性能、高信頼を得られるとしている。

EMCジャパン マーケティング本部 宮治彦氏

 EMCジャパンのマーケティング本部 宮治彦氏は企業データの最終バックアップ先として使われることが多いテープ・ライブラリについて、企業データが増大し、時間内にバックアップ処理が終了しない、リカバリに長時間がかかる、テープ自身の信頼性が低い、などの課題を指摘した。米メタグループの調査によると、夜間に行われるバックアップのバッチ処理のうち最大で20%が失敗しているという。ストレージ管理者の業務のうち最大70%はバックアップ関連で「バックアップ効率化への期待は大きいが、その具体策がなくあきらめている状態」と説明した。

 もちろん高価なディスク・ストレージを導入すればバックアップ/リカバリの問題は解決する。しかし、IT投資を抑える企業が多い中でデータのバックアップ/リカバリ用途のために大きな投資は難しい。そこでEMCはCLARiX Disk LibraryにPCのハードディスクドライブなどで利用されるATAドライブを採用し、コストを抑えた。ATAドライブは一般のストレージ用ディスク・アレイと比較すると信頼性やパフォーマンスは劣るが、テープとの比較では、その優位は明らか。CLARiX Disk Libraryはデータの価値に合わせて最適なコストで管理するという情報ライフサイクル管理(ILM)に基づく製品といえる。

 CLARiX Disk Libraryはテープ・ライブラリのLT01と比較した場合、シングル・ストリームのバックアップ速度(100GB)は最大60%速い。30GBのリストアでも最大で77%速くという。CLARiX Disk LibraryはSANに接続しネットワーク経由で利用できる。既存のテープ・ライブラリの環境を変更することなくCLARiX Disk Libraryに置き換えることが可能。CLARiX Disk Libraryはテープ・ライブラリをエミューレートするため、バックアップツールからはテープ・ライブラリを管理しているようにみえる。エミューレートできるテープ・ライブラリはADIC Scalarシリーズ、ATL Pシリーズ、STK Lシリーズなど。1台のCLARiX Disk Libraryに複数のテープ・ライブラリを仮想的に作成できる。

 バックアップ/リストア機能を搭載したディスク・ストレージは他社も出荷しているが、CLARiX Disk Libraryの特徴はポリシーベースでテープへのデータの自動書き出しができる点だ。EMCではデータの最終保存先としては、テープが引き続き利用されるとみている。管理サーバなどを経由せずに自動でCLARiX Disk Libraryからテープ・ライブラリにデータを移動させることが可能。EMCではデータを保存したテープをオフサイトに保存することで「情報ライフサイクル・プロセスを完成させる」としている。

 CLARiX Disk Libraryの価格は2000万円からで、テープ・ライブラリと比較して30%程度、高いという。CLARiX Disk Libraryで得られるバックアップ/リカバリの高性能や高信頼性と、30%のコスト増を天秤(てんびん)にかけて、ユーザーがどのように判断するか。EMCがCLARiX Disk Libraryの目標とする約50億円の売り上げを上げられるかは、この判断にかかっている。

(編集局 垣内郁栄)

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EMCジャパンの発表資料

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