コグノスからシービヨンドへ、「スピード経営」で疾走する

2004/5/18

 シービヨンド・テクノロジー・コーポレーション日本法人社長に5月11日、田上一巳氏が就任した。田上氏は米シービヨンド本社副社長ならびに韓国法人社長も兼ねており、アジア地域における同社製品の拡販に従事するという。BIツールベンダ・コグノスから転身した同氏は、今後どのようなビジネス戦略を描いているのか。


――ビジネス・インテリジェンス(BI)ツールベンダのコグノスから、ミドルウェア製品を主とするシービヨンド・テクノロジー・コーポレーションへ。コグノス製品はアプリケーションですが、シービヨンドはシステムのインフラ基盤ということで、製品の性格がかなり異なりますが、社長就任に当たってそこをどのようにお考えになっていますか。

シービヨンド・テクノロジー・コーポレーション日本法人社長に就任した田上一巳氏

田上氏 いまのITソリューションの傾向は、アプリケーションだ、ミドルウェアだ、という分け方でなくなってきていると思います。例えばBIについても、本当の意味で会社の状況をリアルタイムに把握するには、ERPのサマリ・データだけでは不十分なんですよね。しかもデータの形態も、文書や画像など非構造化データの割合が大きくなってきている。つまりBIアプリケーションだけでは解決不可能なのです。

 それに加え、Windows、UNIX、Linuxなど次々に新しいトレンドが生み出されています。現在、企業にはさまざまな環境の新旧取り混ぜたシステムが稼働しており、それを使って新しいソリューションを創出するには、どうしても1社1つの技術では難しくなっている。つまりオープンスタンダードに基づいた連携ソリューションが主流になっているので、個々の製品の機能だけで売る時代ではなくなっているのです。こうした意味で、私がコグノスでやってきたビジネスはシービヨンドのそれと近く、十分に生かせると考えています。

――製品カテゴリを分けることに意味はなく、ソリューションベースで見ると、コグノスもシービヨンドも同じ視点に立っている、ということですね。では、そこで共通する“ソリューション”とは何なのでしょうか。

田上氏 一言でいうと「スピード経営」だと思います。かつてスピード経営を実現する手段としてERPが脚光を浴びましたが、現実はどうだったかというと、カットオーバーするだけで1年近い期間が必要でした。それはBIやEAI(Enterprise Application Integration)についても同じで、スピード経営を実現するツールなのに、それ自体に全然スピード感がないのです。製品ごとに固有の技術や機能がネックとなって、逆に導入に時間がかかってしまっていました。

 ユーザー企業は賢いですから、時間とコストばかり膨大にかかるITに投資しようとは誰も思いません。それよりは、「既存のシステムをうまく活用して経営のスピード感を高めよう」とか、「リアルタイムな経営状況を把握するために、効率的にデータを取得して『経営ダッシュボード』を作ろう」といった具体的なニーズが主です。かつてベンダは「このITを持っていれば競争に勝てますよ」という文句を吹聴していましたが、いまそんな言葉に惑わされるユーザーはいません。いかに効率的に会社の状況を可視化し、いかに迅速なビジネスプロセスを構築できるか。これがいまのソリューションの核であり、そこで重要になるのが「オープンスタンダード技術」なのです。

――5月にリリースした「ICAN Suite 5.0」もオープンスタンダードを標ぼうしたシステムインフラ基盤ですよね。

田上氏 そうです。XMLやBPEL、J2EEなどさまざまな標準規格に対応することで、既存のシステム環境を向上させる製品です。2月の発表以来引き合いは多く、新規案件が上回るなど滑り出しは好調です。あるユーザーさんに「この製品の導入効果を見せてくれ」といわれたので、他社に先駆けて資料を提出し、説明に伺うと「本当にこの製品がスピード経営を実現するものだと分かったよ」とおっしゃられ、導入が決まったケースもありました。

 製品を語る際に、ビジネスにとっての価値を含めて語れなければ、見向きもされません。ビジネスと、ビジネスを支えるシステムにとって、どんな価値があるか。「便利になる」だけでは付加価値にならないのです。例えばリストラによって、事業部同士を合併させるとすると、2つの事業部で持っていた顧客情報を統合しなければなりません。事業部同士ならまだ良いのですが、支社や支店の統廃合、会社同士の合併となると、データ形式もシステム環境も異なっていることが考えられます。そう考えると、企業の経営戦略とシステムとはかなり密接な関係になっていることが分かりますよね。システムのどの部分に投資し、どこを強化するかを考えるのはユーザーの役割です。

――すると従来の営業スタイルと違って、経営戦略からシステムを語れる人材が必要になると思いますが。

田上氏 そのとおりです。当社の営業を倍増すると共に、チャネル施策についても強化を図ります。いまお話したように、ビジネスとシステムの価値両方を語れる人材が必要になるわけですから。バブル崩壊以降、どこの企業でも経営体質を引き締める施策が取られていますが、こうした状況は当社にとって正に追い風です。これまでIT業界のビジネススタイルは、「こんな便利なものがありますよ、さあどうぞ」というベンダ主導のスタイルだったわけですが、これからはユーザーにとってどんな価値を提供できるかを提示し、ユーザーがベンダを選ぶ時代になります。

――そうなると、逆にユーザー自身も経営戦略からシステムのアーキテクチャを見定める人材が求められてきますね。

田上氏 そうですね。日本にはCIO(Chief Information Officer:情報統括責任者)はいないといわれていますが、これからはそうもいっていられないと思いますよ。どんな技術をどう使えばスピード経営が実現できるか、会社の組織構造とシステムとの関係性を理解し、最適なものに設計できる能力が必要となります。またユーザー企業にそういう人材が増えてくれば、IT業界もさらに活発になると思います。製品だけでなく、そうした新しい人材に対しての啓蒙活動もできたらいいなと考えています。

(編集局 岩崎史絵)

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