EMS拠点、中国、インドの次は、東欧、南米か

2004/6/11

エルコテック・アジアの社長 ハンヌ・ケイナネン氏

 エルコテック・ネットワーク(本社フィンランド)は6月10日、インド南部のバンガロールに製造拠点を建設すると発表した。同社はインドで携帯電話製造インフラ基盤と電話機のメーカーに製造サービスを提供する最初のEMS(Electronics Manufacturing Service)企業となった。工場の規模は約1000人、今後6〜9カ月で完成させる予定。エルコテック・アジアの社長 ハンヌ・ケイナネン(Hannu Keinanen)氏はインドに進出する理由として、モバイル通信の国内市場の大きさと巨大な潜在成長性、ローコストでありながら教育水準の高い熟練労働者の存在などを挙げる。ケイナネン氏はまた、今後急成長するEMSの拠点として(インド、中国を中心としたアジア地域のほかに)、東欧地域(特にロシア)と南米を候補に挙げている。

 同社は欧州で最大規模を誇るEMS企業で、通信インフラ基盤および携帯電話の製造を強みとしている。フィンランドに本社を持つ企業だけに、ノキアとエリクソンが最大顧客であり、両社向けの売り上げが実に全体の70%弱を占める(2004年第1四半期実績)。製造拠点は北欧〜東欧地域、アジア太平洋地域(中国)、メキシコなど「世界のローコスト地域に展開」(ケイナネン氏)している。今回、インドのバンガロールに新工場を設置することで、日本および韓国をも視野に入れた携帯電話端末メーカーに対するOEM提携締結の踏み台とする思惑がありそうだ。

 現在すでに同社はGMS携帯電話機のライフサイクルマネージメント(設計、製造、アフターサービス)をNECを始めとした数社から請け負っている。特に、世界に分散する同社の工場がインフラとなって行うことができるロジスティクスや修理などのアフターサービスが同社の強みとなっている。インドに新設する工場拠点に同社がこれまで展開してきたサービスを移転させ、日本の端末メーカー2、3社とのパートナーシップ契約締結を狙う。

 EMS事業が躍進する背景には、同事業が請け負うさまざまな技術の標準化が確立し、製品がコモディティ化するという状況が不可欠である。最近の例では、米国で誕生したパソコン産業がそれにあたる。パソコンの製造拠点は欧州からアジアに“移動”した。現在世界に流通しているほとんどのパソコンを実際に製造しているのはブランドメーカー自身ではないことは明らかだ。エルコテックが特化する携帯電話のような通信関連機器も、パソコンと同様の道をたどっている。

(編集局 谷古宇浩司)

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