あなたの年金はグリッド・コンピューティングが救う

2004/6/29

 日本IBMとニッセイ基礎研究所は、多数のクライアントPCを接続し計算能力を高めるグリッド・コンピューティングの技術を活用した「リスク統合管理システム」を開発し、「グリッド版『金融統合リスク管理ソリューション』」(仮称)として販売を開始すると6月28日に発表した。両社は今後、変額年金システムのグリッド化についても共同研究を行っていくという。

 金融統合リスク管理ソリューションは企業の市場リスク、信用リスクを統合的に計測し、金融機関のリスクを評価する内容。金融統合リスク管理ソリューションの多くは従来、UNIXサーバで運用されてきたが、それをグリッド対応にすることで処理能力を増大させて短時間で計算できるようにした。

 ニッセイ基礎研と日本IBMの東京基礎研究所が行った共同実験では、ニッセイ基礎研のオフィス業務で使われている50台のPCをネットワーク化してグリッド・コンピューティングの環境を構築。従来、ニッセイ基礎研が使っていたUNIXサーバでは10時間かかっていた1万回のシミュレーション計算を、グリッド・コンピューティングを使うことで44分に短縮できたという。また、10万回のシミュレーションを行った場合ではUNIXサーバで95時間かかっていた処理がグリッド・コンピューティングで70分に短縮。約80倍の高速化になったという。

 ニッセイ基礎研とIBMが開発したグリッド・コンピューティング環境はPCを単に接続するだけではない。PCを使うユーザーがグリッド・コンピューティングで計算している内容を見えないようにする「データ保護」技術や、時間とともに変動するPCのグリッド構成が計算結果に影響を与えないようにする「インテグリティー」技術、計算の終了時間を予測、制御し、時間内に計算を終了させる「デッドライン・スケジューリング」技術などを用意した。

 IBMとニッセイ基礎研が開発したグリッド版『金融統合リスク管理ソリューション』は、グリッド・コンピューティングを実現する上記の3技術を統合した「金融グリッド・マネージャー」(仮称)と、ニッセイ基礎研の「グリッド版リスク管理アプリケーション」を組み合わせた内容で、WindowsとLinuxで稼働する。金融グリッド・マネージャーは個別見積り、グリッド版リスク管理アプリケーションは最小構成で2500万円から。

 両社はさらにグリッド・コンピューティングについての共同研究を拡大し、変額年金アプリケーションのグリッド化を進めていく計画。IBMは変額年金アプリケーションの市場について「今後市場規模が急速に拡大することが予測される」と指摘している。

(編集局 垣内郁栄)

[関連リンク]
日本IBMの発表資料
ニッセイ基礎研究所の発表資料(PDF)

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