[Interview] フルIPテレフォニー時代こそ好機到来、ジェネシス

2004/7/10

 電話通信コストの削減の切り札として、法人市場でもIP電話導入に注目が集まっている。しかし、安易な取り組みは思わぬ問題を呼ぶ可能性があるとジェネシス・ジャパンの手塚文孝社長は警鐘を鳴らす。

 長年、コールセンター向けにCTIソリューションを提供し、電話とコンピュータの接点で高い技術を提供してきた同社に、コールセンターを含むこれからのエンタープライズ・テレフォニーの在り方と、同社の今後の取り組みを聞いた。


──現在のコールセンター・マーケットへの取り組みは?

ジェネシス・ジャパン 代表取締役社長 手塚 文孝氏
手塚氏 コールセンター・マーケットにおけるわれわれの製品のシェアは、5割以上になっています。コールセンター業界においては、かなり投資は戻ってきていますね。

 過去3〜4年間、ずっと電話のほかにインターネットや電子メールへの対応を分業せずにミックスした“マルチコンタクトセンター”になるべきだといい続けてきたのですが、ここへ来てある程度浸透し、事例としてご紹介できるお客様が現れてきたというところです。

 コールセンター/コンタクトセンターというのは人件費の占める割合が非常に大きいので、そのコスト削減ニーズは大変大きなものがあります。それに対して私たちは、「無人化しましょう」と提案しています。

 背景にあるテクノロジは、“音声認識”と“音声合成”です。この組み合わせで、コンタクトセンターのセルフサービス化が可能です。

 例えば、カード会社などでは住所変更が非常に多く、それをオペレータが受け付けてデータベースに入力していますが、これはもう自動化可能です。数字の認識精度は高いですから、郵便番号の音声入力は問題ありません。プッシュ入力してもらってもいいです。郵便番号があれば住所は実データと付き合わせることができるので、非常に精度の高い音声認識が可能です。アパート名のところもゼンリンさんなどの地図情報とつき合わせますし、何号室というのも当然認識できます。

 あとはどうしても認識できないものだけ、オペレータに回すというふうにすればいいわけです。住所変更のためだけに50人配置していたコールセンターなら、仮にその90%が自動化できれば、同じ業務を5人でできるわけです。自動化といっても、人間とコンピュータのコーディネーションのイメージですね。

──電話のIP化も大きなトピックですね。

手塚氏 弊社では、IPテレフォニー製品を2年前から出していましたが、いまこの分野がヒートし始めています。われわれはアナログの電話とデジタルのコンピュータを融合させるためのミドルウェアのベンダですから、一見フルIPになると無用になると思われるかもしれませんが、実は逆なんです。

 IPテレフォニーは基本がIPですから、エンド・トゥ・エンドのコミュニケーションしか保証しません。IPテクノロジだけでは、交換機で当たり前にできたことができなくなります。

 日本では代表電話が相変わらず使われていて、1つの電話番号で同時に20本の電話機が鳴るような状況です。こうした1対Nの機能は交換機が提供しているもので、グループリンギングや3者間通話、電話会議などもそうです。IPテレフォニーは1対1のコミュニケーションに特化するのであればよいのですが、交換機を撤廃すると1対Nの関係で問題が出てきます。

 この部分が実はジェネシスの真骨頂で、これまで十何年蓄えてきたインテリジェント・ルーティングのテクノロジで支援できます。呼を定義付けして、それ誰に渡すべきか考えて渡すというテクノロジです。

 これをIP基盤に入れると、日本で使われている交換機ファンクションの大概のことができます。交換機に100のファンクションがあるとすると、IPテレフォニーには10ぐらいしかありません。残り90のうち、80ぐらいはジェネシスのソリューションで埋められます。

 現状のIP化は、まだ交換機が残っていますから問題は顕在化していませんが、本来IPテレフォニーが目指すのは、交換機もIVRもいらない世界のはずなんです。

──法人でのIP電話導入は内線中心のようですが。

手塚氏 現在、多くのSIerやキャリアがIPセントリックス・ソリューションを提案しています。これで全国に散らばっている支店間のコミュニケーションをフルIPの1つのサークルに入れて、内線電話扱いで通信コストをゼロ円にするという提案ですね。

 ところが実際に導入してみると内線電話はただになったけれど、外線電話の通話料がぜんぜんコストリダクションされず、結局IPセントリックスにしたものの効果があまりないか、下手をすると過剰投資になってしまう。

 それはなぜかといったら、内線電話しか視野に入っていないからです。会社の事業形態によりますが、電話コミュニケーションのだいたい1割ぐらいが内線なのが普通ですね。その場合、コスト削減効果を生み出す本当のターゲットは外線コミュニケーションなんです。

 いまはまだ真のIP化がされていませんが、実は外線も安くできるんです。そこに至る中で、ジェネシスが1つの答えになると思っています。

──コスト削減以外のIP電話のメリットはありますか?

手塚氏 ずっと勘違いされているんですが、CTIというのはコールセンターにだけ使われるものではないんです。私たちはオフィスCTIといっていますが、フルIPになってくると、全社員がコールセンターのエージェントと同じ環境が作れます。

 電話に着信があった瞬間にデスクのPC画面に掛けてきた人の取引明細や直近のメールをスクリーンポップアップすることにより、非常に生産性の高いオフィス環境を作れるようになるんですね。

──今後のジェネシスの戦略はどのようなものですか?

手塚氏 まずは、最初に申し上げたボイス・セルフサービスにフォーカスした製品と支援体制を整えていきます。それから、VoIPです。これまでは交換機ベンダとのコラボレーションを行っていましたが、これからはソフトスイッチベンダとのコラボレーションを着実にやっていきたいと考えています。

 実はVoIPのマーケットというのは、世界で日本が最も進んでいるんです。米国はたぶん2年ぐらい、欧州が1年半くらい、アジアが1年くらい遅れています。世界をリードしている日本のマーケットでの成功は、全世界に影響すると確信しています。そういった意味で国内のスイッチベンダとコラボレーションして、日本発で仕掛けていきたいと思っています。イベント「G-Force」ではコンタクトセンター・ソリューションの話ばかりではなく、VoIPの話は詳しく説明していきます。

 それとキャリアに対して、ジェネシスの存在を訴求していきたいですね。これまで音声電話とコンピュータ・ネットワークは業界も技術者もまったく別の存在でしたが、IPテレフォニーでは1つにならなければいけません。そのときにジェネシスが必要とされるような戦略を立てるのが大きな柱ですね。

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ジェネシス・ジャパン

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