[Rational Software User Development Conference開催]
IBMがEclipse 3.0基盤のモジュラー型開発環境を発表

2004/7/21

 米IBMは7月19日(現地時間)、米国グレープバインで開催されている「Rational Software User Development Conference 」(RSDUC)で、Eclipse 3.0をベースとしたモジュラー型の開発環境を発表した。この開発環境は要求管理、モデリング、コーディング、テスト、デバッグといったRationalの開発ツール群をEclipseのプラグインとして統合した製品になる。今回の発表は、Eclipseテクノロジの応用に力を入れるIBMがRational合併後に発表した、開発環境に関する最も大きな成果といえるかもしれない。

 IBMは、Eclipseの大きな特徴であるフレームワークをベースとしたプラグイン・アーキテクチャを応用し、表計算やインスタント・メッセンジャーといったアプリケーションを複数のOS上で稼働させる「Workplace」プロジェクトを推進している。この動きからも明らかなように、IBMのEclipse技術に対する傾注には並々ならぬものがある。

 さらに、Eclipse 3.0ベースの技術に、変更/構成管理や要求管理といったRationalの技術を統合することで、ソフトウェア開発のライフサイクルを1つのプラットフォーム上で行えるようにした。

IBM Software Group Rational General Managerのマイク・デヴリン氏

 そもそも、IBMはEclipseプロジェクトの中のサブ・プロジェクトである「Hyadesプロジェクト」に注力をしているという経緯がある。このサブ・プロジェクトは、テストやトレースなど品質管理のためのツールや負荷テストなども視野に含むEclipse用のツールを開発するもの。Hyades以外にも、ツール開発のサブ・プロジェクトは多く存在する(例えば、モデリングからコード生成のフレームワークを開発するプロジェクトなど)が、いずれも“Eclipse上の標準”を確立し、プラグインの乱立を防ぐのを目的としている。つまりIBMは、Rationalの開発ツールの基本技術をEclipseテクノロジ上のデファクトとして確立してしまおうという狙いを持っているようだ。

 なお、この開発環境には、JavaServer Faces(JSF)のサポート、Service Data Objects(SDO)、WebSphereへのリアルタイムのデプロイ、ビジュアルなリファクタリング機能の搭載、C/C++のサポートといった特徴がある。

 ところで、Eclipse 3.0は、SwingとSWT(standards widget toolkit)をサポートするというバージョンアップのポイントがある。通常、EclipseソフトウェアはSWTを使用しているが、Swingも、Eclipseに組み込めるようになった。そして今回、JSFのサポートをIBMが“組み込んだ”。このことは、Eclipse 3.0が「Visual Studio .NET」やサン・マイクロシステムズの「Java Studio Creator」といった既存のWebアプリケーションのインターフェイス構築ツールにとって大きな脅威となる。

 ただし、IBM Software Group Rational General Managerのマイク・デヴリン(Mike Devlin)氏は「あくまで(IBMは)ユーザーの視点に立って製品を開発している。ユーザーにとって何が最も利益があるのかが重要であって、企業間のシェア争いなどはほとんど意味はない」と話す。また「マイクロソフトにしても、サン・マイクロシステムズにしても、(IBMの)最大規模の顧客であり、ビジネス上のパートナーでもある」ことを最後に強調した。

(編集局 谷古宇浩司)

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日本IBM
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