夢の“無停止運用”を実現するストレージ仮想化、EMC

2004/7/23

 EMCジャパンは7月22日、データの価値に従って適切なストレージに格納する「インフォメーション・ライフサイクル・マネジメント」(ILM)の新戦略を発表した。米EMCのEMCソフトウェア・グループ上席副社長 マーク・ルイス(Mark Lewis)氏はILMの一環として「無停止運用」「ストレージ・アウェア・コンテンツ」の新技術を今後ソフトに盛り込んでいく考えを明かした。

米EMCのEMCソフトウェア・グループ上席副社長 マーク・ルイス氏

 EMCは今年6月にソフトウェア事業を再編し、買収したレガートやドキュメンタムの事業を統合した。ILMの全体をカバーすることが可能になり、EMCでは情報/コンテンツ管理、データ移動、保護/リカバリ、情報インフラ管理の各分野でソフトが充実したとしている。サーバ仮想化技術を持つVMwareのソフト製品は多くのシステムベンダとVMwareが関係を結んでいるため、統合せず、子会社として独立性を維持できるようにした。しかし、ストレージやサーバの仮想化の技術分野ではEMC、VMwareは密接に連携している。

 ルイス氏はILM戦略で今後、ストレージの無停止運用と、ストレージとコンテンツを結合し、ポリシーベースでコンテンツを適切なストレージで管理できるようにするストレージ・アウェア・コンテンツの2分野に注力すると説明した。

 無停止運用は複数のストレージにまたがる本番データを無停止で移動できるようにする技術。ハードのアップデートや計画停止などでもストレージサービスは止めないようにする。その鍵となるのはストレージ仮想化の技術だ。サービスを止めることなくデータを自由に移動させるには、複数のストレージを1つの仮想的な巨大ストレージとして統合する必要がある。さらに仮想ストレージ内で容量を割り当てて、データをプロビジョニングする技術が求められる。もちろん、この仮想化技術はマルチベンダに対応するヘテロジニアス環境のサポートが必須となる。

 ルイス氏はストレージを仮想化し、無停止運用を実現する製品として今後、「ストレージ・ルータ」と呼ばれるソフトを出荷することを明らかにした。ストレージ・ルータはSANスイッチにインストールして利用するソフトで、従来の仮想化機能を備えたSANスイッチと比較してI/O速度が高速で、高い拡張性を持つという。既存のストレージ環境を変化させることなく後付けで追加できるのもストレージ・ルータの特徴だ。

 ストレージ・アウェイ・コンテンツはドキュメンタムのコンテンツ管理技術を活用する。ストレージ・アウェイ・コンテンツは「ILMの中心になる重要な技術」(ルイス氏)で、さまざまなデータをどのストレージに保存すればいいのかを判断する。判断の基準はデータの生成とともに作られるコンテンツのメタデータ。ファイル名やサイズなど基本的なメタデータから作成者やファイルフォーマット、セキュリティ情報など多岐にわたる。

 ストレージ・アウェイ・コンテンツはあらかじめ設定したおいたポリシーでこのメタデータを判断し、データのビジネス上の価値を決定、適切なストレージにデータを保存する。時間の経過やビジネスプロセスの変化でデータの価値が変わると、再びポリシーで判断し、別のストレージに移動する。ルイス氏によると7月中にもドキュメンタムがストレージ・アウェイ・コンテンツに対応した製品を発表するという。EMCでも独自にストレージ・アウェイ・コンテンツの技術を開発中で、2005年にもストレージ統合開発ツールの「EMC ControlCenter」に組み込む計画だ。

 また、EMCジャパンはEMC ControlCenterの新機能を発表した。これまでControlCenterはEMCのハイエンド・ストレージである「EMC Symmetrix」をサポートしてきたが、新機能ではミッドレンジ・ストレージの「EMC CLARiX」に対応。「EMC Centera」も管理できる。さらにヒューレット・パッカード、IBM、日立製ストレージの統合運用管理もできるようにした。ストレージ業界団体「SNIA」が策定した運用管理のための標準モデル「SMI-S」もサポートする。

 ルイス氏はILM戦略の推進で「市場シェアの伸びが継続する」と強調。ソフトウェアの国際化の強化やパートナー戦略の積極展開で、現在40%前後の米国外での売り上げを2〜3年で50%にすることを目指すという。

(編集局 垣内郁栄)

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EMCジャパンの発表資料

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