「ICタグはタテ、ヨコ、ナナメの連携で」、村井純氏

2004/7/27

 無線ICタグの標準化やビジネス利用を推進するAuto-ID ラボ・ジャパンと電子商取引推進協議会、EPCglobal Japan(流通システム開発センター)はユーザー企業が参加し、ICタグシステムの普及を促進する新団体「EPC RFID FORUM」を7月26日に設立した。新団体の代表幹事を務め、Auto-ID ラボ・ジャパン所長、慶応大教授の村井純氏が7月26日に開催された「第1回 EPC RFID FORUM」で講演。村井氏は、日本が果たすICタグ開発の役割について「ユーザーやマーケットがリードし先進性を維持する必要がある」と指摘。「われわれに期待と責任がある」と強調し、日本の役割が重要との認識を示した。

EPC RFID FORUM代表幹事でAuto-ID ラボ・ジャパン所長、慶応大教授の村井純氏

 ICタグの開発については米国の業界団体や企業が先行し、米国標準でのシステム作りが進んでいるとの指摘がある。村井氏はこの指摘に反論し、「グローバルなコミュニケーションを作ることを考えた場合、どこから出てこようが世界中が協力するのが重要。日本の貢献は大きい」と述べた。ICタグが決して米国のためだけのシステムではなく、インターネットのように生まれは米国でも、グローバルに利用されるという認識だ。

 一方、EPC RFID FORUMが設立された背景には国内のベンダやユーザー、研究者、行政の意見を取りまとめてICタグの普及を推進するグローバルな組織「EPCglobal」に反映させたいという思いがある。特に最近ではビジネスでの実利用を想定し、産業界からの要望が多く、業界団体との連携が求められる。村井氏はAuto-ID ラボ・ジャパンなどICタグの研究開発団体の役割について「(ユーザーやベンダ、行政などが)タテ、ヨコ、ナナメで連携できるようにする」と説明した。村井氏は、研究開発だけが先行し、ユーザーのニーズが忘れ去られることを戒めて「技術屋は謙虚な姿勢で、連携を探らないといけない」と強調した。

 経済産業省もICタグの推進を後押ししている。経産省は2005年度中に1個5円のICタグを開発する「響プロジェクト」の開発会社として日立製作所を採択したと7月23日に発表した。低価格なICタグを開発することで一般消費財など低価格商品でもICタグが利用されるようにするのが狙い。周波数はICタグの利用で国際標準となっているUHF帯を利用する。UHF帯は現在は電波法の規制でICタグに利用できないが、2004年度中にも利用が解禁されるとみられている。UHF帯の周波数を利用するICタグは、13.56MHz帯や2.4GHz帯を利用する既存のICタグと比較して長距離の通信が可能。通信距離は10メートル程度となり、ロジスティックスや流通現場での利用が拡大するとみられる。日本はICタグ開発を進めると同時に、ICタグの標準化で中国、韓国と協力するなど先行する欧米勢に対抗する。

(編集局 垣内郁栄)

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