CIO経験者はCEOになれない?

2004/7/29

 「本当の意味でビジネスのリーダーとみなされているCIOは少ない。しかし、CEOとCIOの強力な関係がITの可能性を引き出す」。ガートナーEXP リサーチディレクターのデーブ・アロン(Dave Aron)氏は7月28日に開催されたガートナー ジャパンのセミナーでこう述べて、“CEOから見たCIOのあるべき姿”を説明した。

ガートナーEXP リサーチディレクターのデーブ・アロン氏

 ガートナーは2003年第4四半期から2004年にかけて、CIO、ビジネスエグゼクティブへの調査を行った。調査結果によると、80%以上のCIOは社内の信頼を受けていると感じている。だが、CEOへの調査ではCIOは業務を実行するリーダーととらえられていて、ビジネス戦略を共同で立案するパートナーとは考えられていない。

 一方、CIO経験がある取締役がいる企業の株式収益率は平均を上回るという調査結果もある。フォーチュン500の企業313社のうち、CIO経験がある取締役のいる企業は15社。その15社の株式収益率は平均を6.4%上回っていたのだ。アロン氏は「CIOがビジネスリーダーの役割を果たすことができるという裏づけだ」として、「ビジネス戦略にCIOがかかわることのほうが、単にITを実行するよりも企業への貢献度は大きい」と説明した。CIOとCEOが良好な関係を持ち、ビジネスリーダーとしての役割を果たすことがITの戦略的な利用に有効という考えだ。

 アロン氏はCIOとCEOの関係を「危険状態」「事務的関係」「パートナー」「信頼できる関係」の4つに分類した。危険状態から信頼できる関係に進むにつれて、ビジネスへのCIOの影響が大きくなり、ITがもたらす企業への貢献も増大する。しかし、多くの企業では事務的関係に終始。ガートナーの調査ではCIOとCEOがパートナーや信頼できる関係にある企業は、それぞれ5〜10%に過ぎないという。

 では、CIOはどうすればCEOの信頼を得て、良好な関係を結べるのか。アロン氏はまずCIOとCEOの関係が4つの分類のうち、どこにあるのかを把握することが重要と指摘した。その関係を把握したうえで、「異なるスキルと焦点を絞った努力が必要になる」という。異なるスキルとはCIOがこれまでもっていなかったビジネスリーダーとしてのスキルだ。ITのリーダーとしては事務処理スキルや管理、統制、ITの知識が重要となる。しかし、ビジネスリーダーとしてはそのスキルに加えて、社内外の関係性を築くスキルやリーダーシップ能力、社内へ影響力を行使する能力、ビジネス知識が必要となるという。

 アロン氏は加えてCIOがCEOとの関係性をよくするための6つのテクニックを示した。それは「社内外で業務上の指導・助言を受ける」「ビジネス戦略を立案するための時間を確保する」「時間確保のために自分の代理者に力を与える」「IT以外の責任を引き受ける」「自らを教育する」「利害関係者を教育する」。この6つのテクニックを実行することでCEOとの関係を段階的によくすることができる。アロン氏によるとフォーチュン500のうちでCIO経験者がCEOを務めている企業はわずか1%に過ぎない。アロン氏は「CEOになる人物のジョブ・ローテーションとしてCIOを歴任させる企業はまだ、少ない。しかし、CIOをCEO候補としてとらえる企業は多くなってきた」と述べた。

(編集局 垣内郁栄)

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ガートナー ジャパン

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