アドビが考えるPDFと「ドキュメントフォーカスのWebサービス」

2004/7/31

 アドビシステムズはPDFをベースにした同社の「Adobe Intelligent Document Platform」を埼玉県が採用し、県民向けの電子申請システムを構築したと7月30日に発表した。新システムは公的個人認証基盤(JPKI)や各種の認証サービスに対応。住民基本台帳ネットワークで配布される電子署名付きのICカードで、個人認証をできるようにした。米アドビのインテリジェント ドキュメント ビジネスユニット プロダクトマーケティング担当バイスプレジデント ユージーン・ リー(Eugene Lee)氏は「電子申請に対する投資額は中央政府よりも地方自治体の方が多い」と述べ、パートナーと組んで今後も積極的にアプローチする考えを強調した。

米アドビのインテリジェント ドキュメント ビジネスユニット プロダクトマーケティング担当バイスプレジデント ユージーン・リー氏

 埼玉県の電子申請サービスはアドビのパートナーの1社である日立ソフトウェアエンジニアリングが受注し、Adobe Intelligent Document Platformのライセンスを販売した。システム構築は東芝ソリューションズが担当した。

 電子申請サービスはアドビの「Adobe Reader Extensions Server」を使い構築している。Adobe Reader Extensions ServerはPDF文書にさまざまな機能を埋め込むことができるサーバで、通常は閲覧だけのAdobe Readerを使って文書入力をできるようにする。県民は埼玉県のWebサイトにアクセスし、電子申請のPDF文書をダウンロード。PDF文書にAdobe Readerを使って必要事項を入力し、送信できる。Adobe Reader Extensions ServerはPDF文書への文書記入を可能にするだけでなく、日付の自動入力やプルダウンメニューの利用、記入漏れのチェック、文書の添付など“インテリジェンス”を持たせることが可能。プラグインを使って電子署名を付加する機能もある。

 埼玉県は新しい電子申請サービスを8月2日に開始する。「特定給食開始届」や「薬事法に基づく休廃止等の届出」など28件の申請項目を電子化する。2004年度末までには電子申請が可能な項目を80件まで増やす計画だ。

 アドビはパートナーと組んで中央省庁や地方自治体の開拓を急いでいる。アドビはこれまで文部科学省や法務省、岡山県庁、岐阜県庁などの電子申請を手がけてきた。今後は電子申請のシステムに加えて、省庁内や自治体内の業務プロセスをPDFベースで電子化し、効率を向上させる「ドキュメントサービス」の分野にも注力する。ドキュメントサービスは、紙をベースにした組織の既存の業務プロセスをPDFベースに変えることでワークフローを効率化する。

 具体的には紙を電子化する“ドキュメント生成”から、組織内での文書のレビューや承認を電子化する“コラボレーション”、電子化した文書にポリシーベースのセキュリティ機能を持たせてロールに応じて管理する“ドキュメントコントロール&セキュリティ”、電子フォームを作成しワークフローを効率化する“プロセスマネジメント”で構成する。

 これらの機能は単体で利用するとともに、他社のERP、CRM、コラボレーションツールなどに組み込んで利用することが可能。アドビはSAPやIBM、ドキュメンタムなどとパートナーシップを組み、製品間の連携を強めている。リー氏はドキュメントサービスについて「ミドルウェアのような働きをする」と説明。PDFベースでさまざまなシステムを統合し、データ交換の要となることから「ドキュメントにフォーカスしたWebサービスといえるだろう」と述べた。

(編集局 垣内郁栄)

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アドビシステムズの発表資料(PDF)

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