阪急電鉄がピープルソフト製品を採用、選定の決め手を聞いた

2004/8/21

 日本ピープルソフトは同社のERPパッケージ「PeopleSoft Enterprise ヒューマン キャピタル マネジメント」(以下、PeopleSoft HCM)を私鉄大手、阪急電鉄に導入したと8月20日に発表した。阪急電鉄はグループ会社の間接業務を統合するシェアードサービスにPeopleSoft HCMを利用。阪急電鉄グループの18社、約1万人の人事/給与データを扱っているという。

阪急ビジネスアソシエイトのヒューマンリソース事業部 給与担当 マネージャ 和田等氏

 阪急電鉄が採用したのはPeopleSoft HCMの「ヒューマン リソース管理」モジュールと、「グローバル ペイロール(給与計算)」モジュール。実際のシェアードサービス提供は阪急グループの情報システム子会社である阪急ビジネスアソシエイトが提供している。阪急ビジネスアソシエイトのヒューマンリソース事業部 給与担当 マネージャ 和田等氏はPeopleSoft HCMの採用について、「人を中心にシステムを考えている点を評価した。特に従業員の職務の履歴を管理でき、阪急グループの人事戦略と合致しているのが決め手だった」と説明。個人の能力や実績の把握が可能で、5〜10年後をにらんだキャリアプランの作成や管理が可能なところにも注目したという。

 阪急ビジネスアソシエイトはシェアードサービス提供に当たり、複数ベンダの製品から選定した。選定の際に重要視する項目を設定し、各製品をチェックした。その中では従業員の職務の履歴を管理できる機能についてのウェイトを重くしたという。「各製品の業務の効率性は考えなかった。製品が戦略性を持っているかが一番重要だった」と和田氏は強調した。選定は4社の製品から行い、最終的にピープルソフトと別のベンダの2社の製品からピープルソフト製品を選んだ。要件定義から本番稼働までの開発期間は1年3カ月だった。

 阪急ビジネスアソシエイトはWebベースのアークテクチャを採用したPeopleSoft HCMの導入でイントラネット内であれば、どのクライアントPCからも人事/給与システムにアクセスできるようになった。人事の基本情報、勤怠、給与厚生管理を一元管理。従業員に配布したIDをベースに、従業員のすべての人事関連データの履歴を管理できるようにした。グループ内での会社の統廃合など組織や法制の変化に人事/給与制度を柔軟に変化させられるようになったという。

 和田氏によると阪急ビジネスアソシエイトはPeopleSoft HCMによるシェアードサービスの導入で2003年度のグループ各社の人件費を5%削減。和田氏は「今後も毎年5%の削減を目指す。PeopleSoft HCMの導入で何とかやっていけるだろう」と述べた。PeopleSoft HCM導入に伴い、システムをホストからWindowsに変更し、運用コストの削減も見込む。

日本ピープルソフト 日本・アジア パシフィック担当 HCMプロダクト マーケティング マネジャー 横井 クリスティーヌ 由美子氏

 日本ピープルソフト 日本・アジア パシフィック担当 HCMプロダクト マーケティング マネジャー 横井 クリスティーヌ 由美子氏によると、ピープルソフトはPeopleSoft HCMの導入に関して3つの段階を設定している。第1段階はグループ内でバラバラに運用されている人事/給与システムや業務プロセスを統合し、人事部門の効率化を目指す「STREAMLINE」。第2段階は統合した人事/給与システムを一般従業員に利用してもらい、研修の登録や業務査定などをセルフサービス化する「DEPLOY」、第3段階は各従業員のパフォーマンスを管理して企業の経営目標と一致させる「ALIGN」だ。PeopleSoft HCMの各モジュールもSTREAMLINE、DEPLOY、ALIGNの各段階に合わせて用意している。

 ピープルソフトの3段階のロードマップから見ると、阪急ビジネスアソシエイトのシェアードサービスは第1段階のSTREAMLINEに相当するといえる。和田氏は「セルフサービス実施に向けた基盤の整備が今後の課題」としていて、システムを今後も拡張する考えを示した。対象とするグループ会社も2007年度中に26社、約1万5000人まで拡大する計画だ。

(編集局 垣内郁栄)

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日本ピープルソフトの発表資料
阪急電鉄
阪急ビジネスアソシエイト

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