IBM「秋のLinux祭り」で振り返るLinuxの成長と課題

2004/9/8

 日本IBMは7日、プライベートイベント「IBM Linuxコンファレンス〜秋のLinux祭り」を開催した。同社でLinux事業に当初からたずさわっていたというLinux事業部 中原道紀氏は「UNIXからLinuxへの移行はビジネスとして本格的に行われている」と、UNIX市場の中でLinuxの成長が顕著だと強調した。

日本IBM Linux事業部 中原道紀氏

 中原氏はセッションで、Linuxの業界動向と今後について解説。第一段階として1998年以降急速に認知度が高まったLinuxは、2000年頃から始まったWeb環境での優位性やコスト上の優位性などによる第二段階を経て、2003年後頃からISVサポートの本格化、新規アプリケーションの増加、業務システム全体での展開、エンタープライズ対応といった第三段階にあるという。

 エンタープライズへの対応は急速に進んでおり、「SMPのスケーラビリティでカーネル2.4と2.6を比較すると、2.6は最大6倍のパフォーマンス」(中原氏)と、SMP環境でのカーネルのチューニングが進むとともに、セキュリティについても「Linuxはセキュリティレベルが高いと認識されている」(中原氏)と、ほかのOSに対する優位性があるとした。ただし、「オープンソースだからセキュアだ、ということではない。ソースコードが公開されていることでアタックされる危険性もあり、両刃の剣だ」(中原氏)と、Linuxのセキュリティを楽観視しないよう釘を刺す。

 ディストリビュータからはエンタープライズ向けのLinuxディストリビューションが充実してきていると指摘。Linuxカーネルは数カ月ごとに数百のパッチがあてられるほど変化が速いが、エンタープライズ向けのディストリビューションを利用することで、エンジニアがいちいちカーネルパッチを追う必要がなくなり、通常5年から7年程度の継続したサポートを受けることができる。一方で「コンシューマ向けのLinuxはサポートが徐々になくなってきている」(中原氏)とも。

 現在のLinuxの課題の1つは、Windows並の使いやすさの獲得だという。GNOMEによる使いやすいデスクトップ環境やOpenOffice.orgなどの環境は整ってきた。「LinuxがWindowsの代替となりうるか、なるためにはどうすればいいか、ということにも取り組んでいきたい」(中原氏)。

(編集局 新野淳一)

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