[IDF Fall 2004 開催]
スピードから機能へ、インテルのプロセッサ戦略が変化

2004/9/9

 米インテルの開発者会議「Intel Developer Forum」(IDF)が、米国サンフランシスコで9月7〜9日(現地時間)の3日間に渡って開催されている。半導体業界のリーダーである同社のカンファレンスでは、同社の最新技術や研究結果などの報告が行われ、今後の業界トレンドを占う場所にもなっている。

スピード指向から機能指向へ

米インテル社長兼COOのポール・オッテリーニ氏

 インテルといえば、「ムーアの法則」が有名だが、この法則は健在のようだ。同社は8月30日、現行の90nm製造プロセスに続く次世代の65nmプロセス製造技術によるSRAMの開発に成功したと発表した。IDF冒頭の基調講演で壇上に立った米インテル社長兼COOのポール・オッテリーニ(Paul Otellini)氏は、65nmで製造された半導体ウェハを両手に、技術革新が順調に進んでいることをアピールした。

 また同氏は、ユーザーの好みや業界の傾向に変化が起きつつあることを指摘した。「10年前、20年前のPC雑誌の表紙とここ最近のものとを比較すると、昔は『速度』を意識した表現が目立っていたが、ここ最近は無線技術や利用スタイルなど『機能』面を意識したものが目立つ」と述べ、同社の無線機能を包含したノートPC向けチップセットのCentrinoが、こうしたユーザーの嗜好を取り込む役割を果たしていることを強調した。

 インテルがスピード指向から機能指向に向かうのには、別の理由もある。同社はここ数年、プロセッサの消費電力と発熱量増大に悩まされており、単純なクロック周波数の向上が難しい状況に追い込まれていた。そこで同社が出した回答が、プロセッサへのさらなる機能追加による総合パフォーマンス・アップと、プロセッサ・コアのマルチ化によるプロセッサ利用効率の向上を実現することである。

 まず同社が導入したのは「EM64T」と呼ばれるIA-32プロセッサ向けの64ビット拡張機能で、今月に出荷された一部上位のXeonプロセッサから採用されている。そのほか、セキュリティ機能を追加する「LaGrande Technology」(LT)と仮想マシン環境を追加する「Vanderpool Technology」(VT)と呼ばれる機能のサポートを表明しているが、今回新たに複数プラットフォーム間をまたがった管理を容易にする新技術「Intel Active Management Technology」(IAMT)を発表し、今後発売されるプロセッサに搭載していくことを表明した。

 プロセッサのマルチ・コア化というのも、同社にとっては大きな戦略転換だ。同社はすでにデスクトップPC向けのPentium 4で、仮想的にマルチスレッド処理を実現する「Hyper-Threading Technology」(HT)を導入しているほか、2005〜2006年にかけてサーバ向けプロセッサから順にマルチ・コアを採用していくことを表明していた。だが、現行のPentium 4(コード名:Prescott)の後継にあたり2004年後半に登場予定だったTejas(コード名)をキャンセルし、さらに後継プロセッサの開発にリソースを割くなど、ロードマップの大幅な前倒しを実行している。そんな同社にとって最初のマルチ・コア・プロセッサとなるのは、間もなく登場予定の次世代Itanium 2のMontecito(コード名)だ。

無線ブロードバンド技術のWiMAXが立ち上がる

 今回のIDFでの目玉の1つが、無線ブロードバンド技術の「WiMAX」だ。WiMAXは正式には、「IEEE 802.16」と呼ばれる中・長距離高速無線通信の標準技術であり、最大70Mbpsの速度で30マイル(約48km)の距離を無線通信で結ぶことができる。

初公開されたWiMAXアンテナのサンプル製品。個々の製品は、B5〜A4くらいのサイズがある

 基調講演でオッテリーニ氏は、WiMAXの最初の仕様IEEE 802.16-2004の標準化が完了しており、2005年には各メーカーから製品の出荷が開始されると語った。IEEE 802.16-2004は、以前はIEEE 802.16dという名称で標準化作業が進められていた規格だ。IEEE 802.16dはFWA(Fixed Wireless Access:固定無線アクセス)とも呼ばれる。インテルではWiMAX Forumに参加して標準作業を進めていたが、「Rosedale」と呼ばれるIEEE 802.16-2004対応製品の中核となるチップも開発しており、2004年内にもネットワーク機器メーカーに向けて同チップを出荷する計画だ。

 同社では2006年末〜2007年初頭を目標に、ノートPCなどのモバイル端末への搭載を対象にしたIEEE 802.16eと呼ばれる規格の標準化とチップの開発を進めている。固定アンテナが前提のIEEE 802.16-2004に対し、IEEE 802.16eでは小型化と低消費電力化を実現することで、移動中でもWiMAXの利用が可能となる。

(鈴木淳也)

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