IIJ鈴木社長、スパムメールに苦戦

2004/9/29

 インターネットイニシアティブ(IIJ)は9月28日、迷惑メール対策に関する記者セミナーを開催した。冒頭、同社代表取締役社長の鈴木幸一氏が「迷惑メールが大量に届くおかげで、最近ではメール(を利用する場合)は消すことから始める」と苦言を呈した。

代表取締役社長 鈴木 幸一氏

 鈴木社長の自宅のネットワーク環境は128Kbpsのダイヤルアップ回線だという。そのため、「風呂に入る前にメールの受信を始めても、なかなか終わらない」状況だそうだ。「ましてや海外出張に行った時には、回線が56Kbpsということがよくある。スパムメールは非常に困る」とお手上げの様子だ。

 鈴木氏は「通信関連事業は10年、20年あるいは50年先を見据えて行うべきだというのが私の持論。迷惑メール対策は1社では対応できない問題であり、ワールドワイドでの連携が必要だ」と語る。「インターネットの普及が一段落してきたという人が多いが、インターネットが安心して使えるかどうかという点についてはまだまだ足りないことが多い。迷惑メール対策にしても、いますぐできることから、みんなが力を合わせてやっていかなくてはならない」とコメントする。

 IIJによれば、2004年1月の時点で迷惑メールの内訳は北米が約80%、ヨーロッパが10%、アジアが7.6%だった。しかし、中国と東欧から発信される迷惑メールが急増しているという。アジア圏だけで見ると、44%が中国から、次いで31%が韓国から発信されている。同社によれば、「これはスパム業者の数ではなく、中国や韓国にオープンリレーサーバやゾンビPCと呼ばれる踏み台が多く存在している」ためだと分析する。

 増加する迷惑メールの量は、ISPやキャリアの財政を悪化させている。「送信先も存在しないアドレス、送信元も詐称された存在しないアドレスといったメールが、エラーメールを往復させる状況に陥っている。特にこの夏ごろにエラーメールの数が急増し、通常の10倍にも膨れ上がった」という。通常の企業のメールサーバでは、このような急激な変化に対応できずパンクしてしまい、業務に支障がでる。ISPやキャリアにしても、通信機器を増強して対応するものの、増強した分だけ迷惑メールも増えるというイタチゴッコである。

 IIJでは、日本の企業としては唯一、MAAWG(Messaging AntiAbuse Working Group)に参加している。MAAWGは、2004年1月にIIJを含む約20社で立ち上げられたWGで、6月よりNPOとして活動を行っている。

 さらにIIJでは、独自にMAAWG-J(仮称)を立ち上げ、十数社の国内ISPやベンダと協調路線をとっている。主な活動は、Sender-IDの実証実験や情報共有、動的IPアドレスからのSMTPの取り扱い方、ISP間での迷惑メールに関する情報共有のあり方の模索などだ。迷惑メール業者の情報共有については、「顧客情報であること、もしくは憲法に定められている通信の秘密という高い壁によって、なかなか身動きが取れないのが現状」と苦戦を強いられているようだ。

(編集局 岡田大助)

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IIJの発表資料

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