ベリタス、ITシステムのユーティリティ化で最も難しいこと

2004/10/13

 多くのハードベンダがユーティリティ・コンピューティングを推進する。その中にあってストレージ分野のソフトベンダであるベリタスソフトウェアも、同社の戦略の柱としてユーリティティ・コンピューティングを据え、そのソリューションを推進する。

米ベリタスソフトウェアの会長兼社長兼CEOのゲイリー・ブルーム氏。ブルーム氏に米オラクルを辞めてベリタスに転じた理由を聞くと、「オラクルにいてもCEOになれないだろう」と笑いながら答えてくれた

 米ベリタスソフトウェアの会長兼社長兼CEOのゲイリー・ブルーム(Gary Bloom)氏が他社のユーティリティ・コンピューティングと同社のそれとの違いは何かを問うと、「実際のシステムがヘテロジニアス環境であることから、特定のハードベンダに依存しない、ソフトベンダであること」、を挙げる。さらに、ほかのハードベンダがユーティリティ・コンピューティングを徐々に実践しようという中で、「新しいハードウェアからユーティリティ・コンピューティングを実践するのではなく、いまあるハードウェアから実践できる」(ブルーム氏)点もハードベンダと異なると強調する。

 では、どういう手順でユーティリティ・コンピューティングを実現できるのか。ベリタスはそれを5つのステップに分解し、そのステップを実践することで、ユーティリティ・コンピューティングを実現できるとする。そのステップとは、第1ステップがディスカバリ、第2ステップがコンソリデーション、第3ステップが標準化、第4ステップが自動化、第5ステップがサービス、というものだ。さらに各段階でベリタスの製品でそのステップの課題をクリアできるという。ここでは、各ステップについて簡単に紹介する。

 第1ステップのディスカバリでは、ユーティリティ・コンピューティングを導入した企業が、どれだけのシステムリソースを現在保有しているのかを正確に把握する。第2ステップのコンソリデーションでは、利用率の低いリソースをほかと統合し、集約する。ストレージリソースなど、多くの容量を必要とする部門がある一方で、さほどリソースを必要としない部門がある。これらを統合することにより、利用されていないリソースを無駄なく、有効に活用できるようになる。第3ステップの標準化では、例えばSNIAのSMI-S、ITILなどの標準を利用する。また同時に、社内の運用管理プロセスを標準化する。そして第4ステップでは、ワークフローを自動化する。

 そして最後の第5ステップのサービスでは、使用しているリソースの消費量を測定する。そのうえで、ITサービスを使用している部門に対して使用料を得る、という関係を構築する。ベリタスのユーティリティ・コンピューティングの重要なポイントは、この最後のステップであるサービスにある。ITリソースを、各部門でどれだけ有効に活用しているか、またはリソースの使用に応じた売り上げ、利益を得ているかを可視化できるからだ。

 この5段階のうちユーザー企業が実践するのが難しいのはどのステップかという質問に、ブルーム氏は「おそらく、5つのステップのうち、(実践するのが難しいのは)サービスだろう」と指摘した。つまり、最も重要な最後のステップの実践が難しいというのだ。「ITリソースをサービスとして提供する場合、そのサービスを買う側もいる。しかし、買う側はこれまでITリソースの使用料というものを考えたことがなく、いくら使ってもいいという認識だ。使っただけ使用料が取れて初めてIT部門がコストセンターからバリューセンターへと変化するのだが、これを社内で理解してもらうことが難しく、時間がかかる」(ブルーム氏)。

■ベリタスはどこへ行く?

 次に浮かぶ疑問は、ITシステムのユーティリティ化を推し進める場合、ベリタスのソリューションだけですべてが可能なのだろうか。つまり、ハードベンダのソリューションは一切必要ないのだろうか。

 ブルーム氏は「例えばわれわれは、メモリの最適化には取り組んでいない」と認める。「ユーザーは、ソフトベンダとハードベンダの両方のソリューションを必要としている。そのために、さまざまなハードウェアベンダと協業しているのだ」と述べた。

 現在、同社が最も力を入れて取り組んでいるのは、アプリケーション・パフォーマンス・マネジメントの分野だ。アプリケーションの稼働状況を把握し、その問題点を洗い出し、それをグラフィカルに表示する。同社の成否でいえば「VERITAS Indepth」「VERITAS Inform」、そして「VERITAS Insight」といった製品群だ。これらの製品により、アプリケーションのパフォーマンスのボトルネックを見つけだし、その原因を特定できる。ユーティリティ・コンピューティング、そしてアプリケーション・パフォーマンス・マネジメントといったソリューションを見ると、同社はストレージベンダからの脱却を考えているのだろうか。

 「われわれはもちろんストレージベンダだ。確かに幅広い製品ソリューションを提供しているが、その中ではストレージが大きな柱である。ユーティリティ・コンピューティングでも中核をなすものだ。ITシステムの中核にあるのがストレージである。それには、最も高可用性、パフォーマンスが求められる。それらを一元管理し、バックアップし、リストアする。その周囲の構成要素でユーティリティ・コンピューティングを構成しているのだ」というのが、ブルーム氏の解答である。つまり、ベリタスはストレージをITシステムの中核としてとらえ、その中核からストレージとシナジーがある周辺部分の製品、ソリューションを提供する。そして、その前提にあるのがベンダに縛られないソフトベンダとしての優位性にある。

■ストレージエンジニアが育たない理由

 最後にストレージエンジニアについて、ベリタスに尋ねてみた。それは、急速にストレージの使用量は拡大しているのにもかかわらず、ストレージにかかわるエンジニアは少ないように感じるが、それはなぜか。また、どうすれば増えるのだろう、という問いだ。

 ブルーム氏はそれに対して、次のように答えた。「グローバルレベルでストレージの知識を持つエンジニアは少ない。ストレージ管理者(アドミニストレータ)とストレージ構築者(ストレージ関連の構築ができるエンジニア)の双方が不足している。実際にストレージで何かしたいとなると、競合他社の人材を引き抜き合っているのが現状だ。では、なぜストレージエンジニアが育たないのか。それは、ストレージ管理者、というコンセプトを持っている会社がなかったからだ。データベース管理者、セキュリティ管理者などは育ててきたが、ストレージに関しては育ててこなかった。

米ベリタスソフトウェア アジア太平洋/日本地域担当シニア バイス プレジデント兼ジェネラル マネージャ スティーブン・レオナルド氏

 そこでベリタスでは、現在2つのことに取り組んでいる。1つ目は、メンテナンスなどのストレージ管理について、広範囲なトレーニング活動を展開している。2つ目は、全世界のハードベンダやシステムインテグレータと一緒に協力することで、できるだけストレージにかかわるエンジニアに負荷がかからないようにする活動だ。具体的には今回の富士通や日本ネットワーク・アプライアンスとの協業などもそれに当たる。そしてもう1つは、VERITAS ジャパン エンジニアリング センターの活用だ」

 米ベリタスソフトウェア アジア太平洋/日本地域担当シニア バイス プレジデント兼ジェネラル マネージャ スティーブン・レオナルド(Steven Leonard)氏はVERITAS ジャパン エンジニアリング センターについて、次のように付け加えた。「センターは、ソフトのローカライゼーションなどのスピードアップだけではなく、コミュニケーションの場としても機能させたい。富士通やNECなどのエンジニアと一緒に活動や取り組みができればと考えている。また、検討課題として考えているのが、Exchangeプログラム(交換プログラム)のような取り組みだ。これは、ベリタスのエンジニアをベンダに派遣し、ベンダのエンジニアをベリタスに派遣してもらう、といった内容だ」

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ベリタスソフトウェア

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