先進県に聞く、自治体のITベンチャー支援は使える?

2004/10/30

 地方自治体のITベンチャー支援が広がりつつある。千葉県はマイクロソフト、東京大学などの協力で地場のITベンチャーを育成する新組織を設立。北海道も道内のITベンチャーを育成、支援する取り組みを始めている。広島県はITベンチャー向けに無料オフィスを提供する事業を行っている。しかし、自治体によるITベンチャー支援に対しては「オフィスなどの箱物を作って終わり」という意見もある。ITベンチャー支援の実際はどうなっているのか。1996年からITベンチャーの支援を行っている岐阜県の100%出資財団、ソフトピアジャパンに聞いた。

ソフトピアジャパン 広報室 広報チームリーダー 主幹 久野茂之氏

 ソフトピアジャパンはITベンチャーの支援や研究開発、地域のIT化などの目的で1993年に設立された。1996年には岐阜県大垣市にITベンチャー支援の中核施設「ソフトピアジャパン・センタービル」を設立。2000年にはセンタービルの近隣にオフィススペースをITベンチャーに提供する「ソフトピアジャパン・ドリーム・コア」を建てて、ITベンチャー支援を本格化させた。ソフトピアジャパンの広報室 広報チームリーダー 主幹 久野茂之氏によるとドリーム・コアには現在、175社のベンチャーが入居し、約2000人が働いているという。

 ドリーム・コアの入居率は「6〜7割程度」(久野氏)。入居の応募は多数あるというが、「入居審査があり、入居が認められるのは3社に1社。技術があっても経営がダメでは難しい」という。久野氏は「オフィスが倉庫代わりに使われるのは一番困る」と述べていて、着実にビジネスを展開し、成長を見込める企業だけを入居させているようだ。ドリーム・コムの使用料は1部屋(22平方メートル)で月額2万7214円。入居2年目以降は月額3万8726円となる。最長で3年間利用できる。

 入居している175社で多いのがソフトウェア開発企業。技術力があればすぐにビジネスを始められることがあり、ドリーム・コアを利用するケースが多いようだ。ソフトウェア開発でも大手ベンダなどの受託業務を行っている企業が多いという。マイクロソフトはドリーム・コアに入居する企業に対してソフトウェア提供やトレーニングなどの支援を行っている。これまで6社が支援を受けている。

ソフトピアジャパン 広報室室長 田代信司氏

 ドリーム・コアに入居する企業の共通の課題は「どのようにして仕事を取ってくるかということ」(ソフトピアジャパン 広報室室長 田代信司氏)。主要マーケットである首都圏や関西圏から離れていることに加えて、起業したばかりで人脈に乏しい経営者も多く、新規ビジネスの開拓が共通の課題となっているという。ソフトピアジャパンでは入居している企業の1社1社に対して担当のスタッフをつけて、営業面や経営管理面でのサポートを提供している。必要な場合は専門のコンサルタントの紹介なども行っているという。ベンチャー企業の交流会やセミナーなども開催している。久野氏は「今後は企業同士の自発的な取り組みも重要になるだろう」と語った。田代氏は「入居企業は最終的には上場を目指してもらいたい」と述べ、期待をかけている。

 ソフトピアジャパンはもう1つの心配事がある。それは就任以来、ITベンチャー支援事業を強力に引っ張ってきた岐阜県の梶原拓知事が2005年2月の任期満了で引退することを明らかにしていること。1月に行われる知事選の結果によってはソフトピアジャパンの運営方針が大きく変わる可能性も否定できない。久野氏は「15万人の大垣市に2000人の雇用を確保したということで、岐阜県議会からは支持を受けている」として「知事が代わっても方針は変わらないと思う」との見方を示した。

(編集局 垣内郁栄)

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