富士通が挑むIT基盤「TRIOLE」の新たな役割

2004/11/5

 富士通は11月4日、ミドルウェアの最新バージョン「Systemwalker V12」と「Interstage V7」を発売したと発表した。ともに富士通のIT基盤「TRIOLE」に仮想化、自律化機能を実装するミドルウェア。新バージョンではグリッド・コンピューティングへの対応を強化した。富士通の取締役専務 伊東千秋氏は「トリオーレの自律、仮想の商品としてようやく具体的なものを発表できるようになった」と自信をみせた。

 Systemwalker V12はインフラを管理する運用ミドルウェアの位置付け。Interstage V7は業務アプリケーションを中心に管理する業務ミドルウェア。Systemwalker V12は9製品の機能が強化され、新たにセキュリティ管理など4製品が追加された。Interstage V7は12製品の機能が強化され、3製品が追加された。

富士通の経営執行役 ソフトウェア事業本部長 棚倉由行氏

 富士通がSystemwalker V12の「中核」と位置付けるのが機能を強化した「Systemwalker Resource Coordinator V12」。サーバやストレージ、ネットワークなどのリソースを仮想化して共有プールを作成し、処理が集中している業務に必要なタイミングでリソースを割り当てることができる。1つ1つの業務にひも付いているサーバやストレージ、ネットワークの構成を変更するには、これまで手作業で行う必要があったが、Resource Coordinator V12を導入することで運用管理の担当者が1つのコンソール上で設定を変更できるようになった。リソース配分などを担当者が調整する必要もなく、簡単な作業でリソースの変更や新たな業務にリソースを割り当てることができるという。

 富士通の経営執行役 ソフトウェア事業本部長 棚倉由行氏は富士通のミドルウェア戦略について「いま求められるのはベストエフォート型から(サービスの)保証型への転換」と説明した。富士通ではSystemwalkerのグリッド技術を使ってITリソースを仮想化し、プラットフォームの安定性の向上と運用管理コストの低減を狙っている。そして、プラットフォーム上で稼働する業務アプリケーションについてはInterstageで「業務をサービス化する方向で強化している」(棚倉氏)という。ITベンダ各社が提唱しているサービス指向アーキテクチャ(SOA)を実現して「変化に強い柔軟な業務システムの構築」を目指すという。

 プラットフォームと業務アプリケーションという2つの要素を考える場合、トリオーレは「長期間使い続ける業務アプリケーションと、日々変わるプラットフォームのそれぞれのライフサイクルを分離し、ギャップを吸収する」(棚倉氏)ための基盤となる。棚倉氏は「ITリソースだけでなく、業務の継続性に着目した」と説明した。プラットフォームと業務アプリケーションのそれぞれのライフサイクルに注目し、ミドルウェアにそのライフサイクルの違いを埋める役割を持たせる考えは、野村総合研究所もプレス向けのセミナーで指摘している(参照:「システムの“のりしろ”IT基盤を強化せよ、NRI」)。今後、ITベンダの注目のソリューションとなる可能性もある。

 富士通はトリオーレの進化を3段階で考えている。第1段階はシステムのパフォーマンスや障害を可視化し、運用管理コストを低減すること。今回のSystemwalker、Interstageの最新バージョンは第2段階に当たり、業務アプリケーションの運用を自律化することで安定運用を図る。そして2005年以降に予定している第3段階ではポリシーベースによる運用管理の自動化を目指す。

(編集局 垣内郁栄)

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富士通の発表資料

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