激戦メインフレーム市場、サーバ統合の覇者を狙うIBM

2004/11/9

日本IBM 常務執行役員 システム製品事業部担当 橋本孝之氏

 日本IBMは顧客企業のサーバ統合を支援する「統合システム移行センター」を同社クロス製品事業部内に設置する。社内から営業およびテクニカル・サポート要員を10人程度派遣するほか、国内のシステム・インテグレータ16社で構成されるパートナー企業も共同で運営にあたる。日本IBM 常務執行役員 システム製品事業部担当 橋本孝之氏は「このセンターは他社製メインフレームからのサーバ統合による移行を促すためのもの」と説明する。年内10程度の実験的な案件を無償で行う予定。

 同社のサーバ統合案件の最前線に立つのはメインフレーム機「zシリーズ」である。橋本氏によると「zシリーズ」の2004年1月〜9月の成長率は「前年比100%増」と好調であるという。特に、OSにLinuxを採用したモデルの伸びは著しく、同シリーズ出荷実績の35%はLinuxモデルが占める。メインフレームからの移行需要だけではなく、他社製UNIXサーバからの移行需要にもLinux搭載zシリーズが大きな存在感を示す。

 日本IBMにとって、メインフレームの“技術遺産”はサーバ統合を推進するうえで貴重な戦力となっている。もちろん、IAサーバの「Xシリーズ」や旧AS/400の「i5」およびUNIXサーバ「P5」も貴重な戦力であり、「それぞれ好調な出荷実績を示していることに変わりはない」(橋本氏)。しかし、サーバ統合を巡る技術的な革新の中核には常にzシリーズがある。

 同社では「広域分散並列シスプレックス」(GDPS)に対応する機種をほかのサーバシリーズにも拡大し、zシリーズが同社の中小規模サーバを管理する構成を推進している。また、2010年までにzシリーズのスキルを持った技術者2万人を育成する計画も展開中である。年末までに全国20の大学で専門講義を行う体制を整える。

 同社がメインフレーム技術に“傾注”するのは、サーバ統合を進めるうえで中核となる「仮想化技術」に強みを持つためだろう。サーバの論理分割(LPAR:LogicalPartitioning)を始めとした同社の仮想化技術はzシリーズのようなメインフレーム機だけではなく、中小型のサーバ製品にも搭載されている。そして、このような仮想化技術の進化は「Power5」プロセッサの開発とも密接にリンクしているのである。

(編集局 谷古宇浩司)

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