セマンティックWebが科学コミュニケーションを救う

2004/11/13

 国立情報学研究所は国立遺伝学研究所、三菱総合研究所、東京理科大などと共同で一般向けにライフサイエンスの最新情報を分かりやすく解説するWebサイト「次世代バイオポータル試行版 Jabion」を11月11日に開設した。国立情報学研究所の藤山秋佐夫教授は「最新の研究情報を分かりやすい日本語で提供し、一般と科学者の間にある科学コミュニケーションの問題を解決したい」としている。WebサービスやセマンティックWebなど最新のIT技術を使って、一般だけでなく専門の研究者にも利用しやすいWebサイトにする方針だ。

国立情報学研究所の藤山秋佐夫教授

 Jabionのメインコンテンツはライフサイエンスに関するコラムと用語辞書。コラムは「青いバラをつくる」や「BSEに感染しない牛」「DNAコンピューティング- 何? どこまで進んだの?」などのコンテンツが用意され、新聞やテレビで紹介されたライフサイエンスの最新の成果を専門の研究者が分かりやすく解説する内容。図版なども使い「高等学校のレベルのちょっと上」(藤山教授)の情報を求める読者をターゲットに情報を提供する。

 用語辞書も一般向けのコンテンツ。高校や大学、雑誌、専門書などから収集したライフサイエンスに関する用語を解説する。日本語、英語で検索が可能。3万件以上の用語解説が登録されている。検索結果には用語の解説だけでなく、関係する用語の解説なども合わせて表示される。

 研究者向けのコンテンツは最新のIT技術を利用している。インターネット上で公開されている遺伝子予測や進化系統解析などの解析ツールをWebサービス技術を活用して連携し、自分の研究内容に沿った解析ツールを作成できる「バイオインフォマティクス道具箱」や欧米の研究機関が運用するゲノム配列情報のデータベースをWebサービスで連携させて、統一のインターフェイスで検索できるようにするサービスなどを提供する。

 Webサービスに加えてセマンティックWebの活用も計画している。Webサービスで連携させたデータベースを利用するには、専門用語を知っていることが前提で、特定分野の研究者しか利用できないことも考えられる。そのため国立情報学研究所では同じ概念の言葉をツリー構造に整理する“オントロジ”を活用してメタデータを生成し、関連する用語で検索すれば、検索エンジンがユーザーの検索意図を理解し、最適な結果を表示するセマンティックWebの研究を行っている。

 Jabionの試行は2006年3月までの予定。藤山教授は「期間終了後も国立情報学研究所で提供している学術コンテンツ・ポータル『GeNii』の一部として継続することを望んでいる」としている。

(編集局 垣内郁栄)

[関連リンク]
次世代バイオポータル試行版 Jabion
国立情報学研究所

[関連記事]
グリッドのミドルウェアを2005年に公開、NAREGI (@ITNews)
Semantic Webをメタメタにしないために (@ITNews)
XMLエバンジェリストが予測、「SOAがシステム統合を解決」 (@ITNews)
超高速コンピュータ網形成プロジェクト「NAREGI」とはなんだ? (@ITNews)
「Semantic Web」と「メタデータ」のメタな関係 (@ITNews)
GMPLS実用化は3年後? 世界初の実験で「大きなステップ」 (@ITNews)

情報をお寄せください:



@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)