ITSSは誤解されている、ITSSユーザー協会

2004/11/27

ITSSユーザー協会 専務理事 高橋秀典氏

 「ITSS(ITスキル標準)は誤解されている」。こう語ったのは、ITSSユーザー協会 専務理事の高橋秀典氏だ。

 高橋氏の話は、「まずITSSを導入しよう」、というスタンスではダメだと強調する。ITSSを自社に導入する場合のポイントとして高橋氏が挙げるのは、まずは自社のビジネスモデル、それに沿った人材モデルが必要だという点だ。

 そのためには、自社の事業の業務分析が必要で、それをファンクションごとにどのようなスキルが必要かなどを検討していく。ある意味で、これはその会社に必要な人材のTo Beモデルとなる。この中からITSSに定義されたものがあれば、それを重ね合わせていく。すると、ITSSで定義されたものとその会社独自のスキルによるマップができる。それによって従業員であるITエンジニアのスキルを評価し、企業のビジネスモデル、人材モデルからITエンジニアのキャリアの方向性やスキルマップを提示することができると解説する。

 そのうえで、ITSSを理解するのは2つの軸を知っていれば分かるという。1つはスキル領域ごとに分割されているスキルに関して、そこで定義されていることができるかどうかを問うスキル熟達度である。そしてもう1つは、職種、専門分野のレベルごとに要求されている達成度指標(責任性、複雑性、サイズ、タスク特性)を問うもので、これはあるITエンジニアの過去の経験を聞くもの。この2つの軸で見れば、ITSSを容易に理解できるとする。

 しかし、実際はITSSは誤解を受けやすく、まだまだきちんとした定義や内容が浸透していないと高橋氏は強調する。例えばITSSでは、ITスペシャリストやITアーキテクト、ソフトウェアデベロップメントなど11職種を38専門分野に分けている。よくある誤解はあるエンジニアは、その中のどこか1点に位置する、といった誤解だ。

 そのため、ITSSのどこか1点に位置するあるITエンジニアは、そのままその職種の専門分野のより上位を目指すしかないという誤解も生まれる。具体的にいれば、ITスペシャリストのデータベースの専門分野のレベル3に位置しているから、そのままレベル4、レベル5、といった具合に、その職種、専門分野が固定化され、単一のスキルマップしなかないように思われることだ。

 実際には、あるITエンジニアはITスペシャリストではレベル4で、カスタマサービス(職種)のソフトウェア(専門分野)ではレベル3、ソフトウェアデベロップメント(職種)の基本ソフト(専門分野)ではレベル3といった具合に、複数の職種(専門分野を含め)についてそれぞれのレベルにあると考えるのが妥当だというものだ。しかし、世間では、まずあるエンジニアはどの職種にいて、どの専門分野なのかを問うてから、そのレベルを測ろうとしているとして、高橋氏はそうした動きを批判する。

 批判や誤解などにより、なかなか浸透しているとはいえないが、ITSSを積極的に導入しようとする企業もある。特に最近だと「エンドユーザーが注目している」(高橋氏)と語る。実際、製薬メーカーのファイザーは、アジアパシフィックのIT部門の600人(日本の社員30人、アウトソーシング先の150名を含む)にITSSを適用しつつある。導入の狙いを高橋氏は「調達のため」と語る。調達先の会社、エンジニアが、ファイザーが求める能力に到達しているかどうかをチェックする。ITベンダが導入をためらっている間に、ユーザー企業が調達条件としてITSSを突きつける。その対応に追われるITベンダ。しかしそのITベンダは、ITSSは難しい、そのままでは適用できない、自社の評価制度からの乗り換えが難しい、などの理由で二の足を踏んでいる。

 高橋氏は、ITSSの導入が、ITベンダの競争力を強化するという。果たして、ITベンダの反応はどうだろうか?

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ITSSユーザー協会

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