IBMエバンジェリストと過ごす「GridでAutonomicなXmas」

2004/12/22

 日本IBM グリッド・ビジネス事業部 技術理事で、グリッド・コンピューティング担当のエバンジェリスト 関孝則氏は12月21日、同社が開いたイベント「グリッドとオートノミックによる新しいITインフラの構築〜GridでAutonomicなX'mas〜」で講演し、グリッドの現状と将来を説明した。関氏は「グリッドを学ぶにはこれまでのITに関する知識のすべてを勉強する必要がある」と述べ、グリッドがWebサービスやサービス指向アーキテクチャ(SOA)などさまざまな技術の集合体であることを説明した。

日本IBM グリッド・ビジネス事業部 技術理事 グリッド・コンピューティング担当のエバンジェリスト 関孝則氏

 グリッドが最初に注目されたのは膨大な計算を行う科学技術計算の分野。分散したコンピュータ・リソースを仮想的に統合し、計算処理能力を高めた。ビジネス分野でのグリッドの利用も、複数のコンピュータを連携させて仮想的に巨大なコンピュータを構築する。ポイントはヘテロジニアス環境、異なるネットワーク、異なる組織などを超えて連携する点。サーバのクラスタ構成をグリッドと呼ぶ場合もあるが、関氏は「クラスタは同一機種、密な分散、組織を超えない」と述べ、グリッドの定義からは外れると指摘した。

 企業がグリッドに期待するのは業務のサービスレベルの維持だ。1つのサーバに障害が起きても連携している別のサーバが処理を引き継ぎ、負荷を分散する。グリッドで構築しているバックエンドのシステム構成は負荷に応じて自動で変化していくが、エンドユーザーから見た場合のサービスは同一で、継続して提供される。グリッドはこの環境を実現する。

 関氏の考えでは、グリッドはシステム内のリソースの仮想化からデータセンター内、イントラネット内での仮想化、組織を超えた仮想化へと進化する。組織を超える仮想化を実現するうえでベースになるのは、オープンな標準化技術の確立だ。IBMはグリッドを実現する新しいアーキテクチャ「Open Grid Services Architecture」(OGSA)を提案している。OGSAはWebサービスの標準技術を実装。関氏は「グリッド、Webサービス、オートノミックの3つの分散処理を結合した」としている。

 Global Grid Forum(GGF)などグリッドを推進する業界団体が今後目指すのは、複数の組織がグリッドで連携し、1つのサービスを提供する基盤の提供だという。例えばゲームや音楽を配信する複数のサービスを組み合わせて1つのコンテンツとして提供することや、専門的サービス、低価格サービスを組み合わせて、顧客にとって最適化された1つのサービスを提供することなどが考えられるという。関氏は「インターネットで複数組織が連携し、柔軟なグリッドのサービスを提供する時代が到来する」と強調した。

(編集局 垣内郁栄)

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