[Lotusphere開催]
Notesはなくなる? Dominoの将来は? IBMの本音を読む

2004/1/27

 米フロリダ州オーランドで開催されているLotusphereの基調講演で、IBMのロータスソフトウェア ゼネラルマネージャ アンブシュ・ゴヤール(Ambuj Goyal)氏は「マイクロソフトは『Notes/Dominoはいずれなくなる』というキャンペーンを打っている、しかしそれは真実ではない」と切り出した。ではNotes/Dominoはこの先どうなるのか? IBMの公式なアナウンスでは、Notes/Dominoは継続して進化していくとなっている。しかし会場に集まった約1万人の聴衆が知りたいのはIBMの本音だ。

 高度なコラボレーションを実現するIBM Workplace構想の下では、従来の「Notes/Domino」製品ラインと、WebSphereとEclipseをベースに新しく登場した「Workplace」製品ラインの2系統が存在する。今後もこの2つの製品ラインは維持されるのだろうか? Lotusphere 2005で発表された内容と、プレスブリーフィングで関係者から得られた情報を総合して読み解いてみる。

■Notesクライアントはなくなるのか?

 Notesの機能がリッチクライアントとして新しい製品に引き継がれ、Notesという形のソフトウェアは徐々になくなっていく可能性が高い。IBMは2005年夏にNotes 7の出荷を開始し、2006年にはNotes 7.x、その先にNotes 8をリリースするところまで発表し、顧客にNotesの継続を約束している。

Workplace Client Technologyのデモ画面。Eclipseの画面の中でNotesクライアントが稼働している(クリックで拡大します)

 同時にNotes 7のリリース時点で「Workplace Client Technology」として、Notesクライアントとほぼ同等の機能を持つEclipseのプラグインをリリースする。これはEclipseの上でNotesクライアントをまるごと動かしているようなものになりそうだ。その意味ではWorkplace Client TehnologyのNotesクライアントとの互換性はほぼ完璧であり、この時点でWorkplace Client Technologyに一本化してNotesクライアントをやめてしまってもいいように思える。

 しかし、Workplace Client Technologyの狙いはその先にある。Notesクライアントの機能を、レプリケーションやカレンダー、メール、ディスカッションなどに分解してモジュール構造にし、ユーザーごとに必要な機能だけをロードしたり、カスタマイズを可能にするのが最終的な到達点だ。機能強化もEclipseというオープンなプラットフォームのプラグインという形で行え、サードパーティやオープンソースの力も借りられる。モジュールをJava化することでWindows、MacOS、Linuxなどのクロスプラットフォーム展開も想定されているだろう。

 おそらくこうしたWorkplace Client Technologyのモジュール化の完成と安定化には、あと数年はかかると見られる。

 そのあいだ、企業ユーザーには安定したクライアントとしてNotesクライアントが提供し続けられることは間違いない。Workplace Client Technologyの開発過程で得られたモジュール化の恩恵なども、Notesクライアントにフィードバックされて改良が続くと思われる。

 しかし数年後、Eclipse上でのNotesのモジュール化が完成すれば、Workplace Client Technologyは現在のNotesとの互換性を持ちつつ、高い管理性と拡張性を実現することになる。IBMのクライアントのロードマップを考えると、ここでWorkplace Client TechnologyがNotesの進化を上回ることになるだろう。そしてその時点で従来のNotesクライアントは徐々にフェードアウトしていくのではないだろうか。もしくはNotesにEclipseの機能を盛り込んでしまい、実質的にはNotesでもEclipseでもどちらも同じ、といったことになるかもしれない。

 いずれにせよ、そのタイミングは早くても2010年以降ではないか。

■Dominoサーバはなくなるのか?

 Dominoは、WebSphereやDB2と共存していくと予想される。Dominoは、メールやディスカッションを行うメッセージングサーバ兼カスタムアプリケーションを稼働させるアプリケーションサーバであると同時に、多数のドキュメントを格納するオブジェクトデータベースとしての側面を備えている。

Workplace Designerの画面。フォームベースのアプリケーションを容易に構築できる。画面はDomino Designerにそっくりだ(クリックで拡大します)

 IBMは、Dominoをオープンなプラットフォームとするために、アプリケーションサーバとしてのDominoの機能をWebSphere上のJ2EEに移植し、オブジェクトデータベースとしての役割をDB2に移植しようとしていた。それゆえに「いずれDominoはなくなる」とライバルから言われてきたのだ。

 しかし、IBMはDominoの性能と機能を損なうことなくJ2EE化することは難しいと判断し、Dominoはそのままで、WebSphere経由でDominoを利用することで手っ取り早くDominoをJ2EEなどのオープンプラットフォームの中で利用するという考えに転換したようだ。

 とはいえ、コラボレーションサーバをJ2EEで構築する、という方向についてはIBMは考えを改めていない。今年登場する「IBM Workplace Collaboration Services 2.5」は、WebSphere Portalをベースに構築されたコラボレーションサーバだが、その機能はメッセージングやディスカッションなどDominoに非常に近い。そして、すべての機能がWebSphere上に構築されているため、Notesクライアントは不要で、Webブラウザから利用する。機能も見かけもNotes/Dominoにそっくりだ。恐らく、DominoをJ2EE化する過程で得られた成果が投入されているのだろう。それゆえに、新規にグループウェアを導入しようという顧客ならば、このWorkplace Collaboration Servicesで問題ない。

 中小から中堅企業向けには、Workplace Collaboration Servicesの簡易版である「IBM Workplace Services Express」が用意される。基本的な機能を備えながら、インストールや運用が簡単な製品だ。いままでIBMはNotes/Dominoで中堅中小企業マーケットへ何度も挑戦してきたが、これからはこの製品で攻略を図る。

 おそらく今後、新規の顧客には徐々にWebSphereベースのIBM Workplace Servicesが浸透していくと予想される。しかし、過去に築き上げたDominoの資産が急激になくなることは考えにくい。

 そこでIBMは、DominoとWorkplace Collaboration Servicesの2系統の相互運用性を徹底的に高める戦略を採っているのである。Workplace Collaboration Services経由でDominoへアクセスする方法を提供したり、両者の開発ツールの使い勝手をほぼ同一にし、Dominoの開発スキルをそのままWorkplace Collaboration Servicesでも使えるようにするなどがその戦略に当たる。そのため、顧客には用途に合わせてDominoとWorkplace Collaboration Services(中堅以下にはWorkplace Services Express)を引き続き提供していくことになるだろう。

(@IT 新野淳一)

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日本IBM

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