オープンソースの不安定さを数値で示す、マイクロソフト

2005/2/10

米マイクロソフトのプラットフォーム戦略 主幹プログラムマネージャ ビル・ヒフ氏

 米マイクロソフトのプラットフォーム戦略 主幹プログラムマネージャ ビル・ヒフ(Bill Hilf)氏が来日した。以前在籍していたIBMではLinuxの技術戦略を展開し、IEEEでは、過去12年間に渡るオープンソースソフトウェア(OSS)活動の実績を背景に、DVP(Distinguished Visitor Program=著名客員講演者プログラム)でOSS関連の講演を担当する、というバックグラウンドを持つ。現在はマイクロソフトに在籍しているということもあり、発言の方向はどうしても“OSSと比較した時のマイクロソフト製品の優位性”というテーマに傾きがちだが、ヒフ氏の本音はあくまでも「数値データに基づく総合的な比較材料を顧客に提示すること」にあるようだ。

 マイクロソフトが2004年初頭から開始した「Get the Fact」キャンペーンは、第三者調査機関のデータを引用してLinuxとWindowsのTCO(総所有コスト)を比較し、「WindowsはLinuxよりコスト高」というイメージの緩和を狙ったものだった。このキャンペーンは、その後「セキュリティへの取り組み」「安定性・信頼性」を訴求する試みへと発展していく計画として立てられた。その予定は順調に進み、現在では「安定性・信頼性」の段階へと入っている。

 ヒフ氏のプレゼンテーションは、OSSの“不安定さ”をさまざまな数値データを列挙することで浮き彫りにしようとするものだった。例えば、Linux2.6におけるカーネルバージョンアップごとのパッチ発行回数として「1時間あたり2.4件」といった数値や、OSSプラットフォームそのものの安定性を疑問視する数値(Linux2.6のカーネル変更は4万3967件)を挙げ、「あらゆるレベルで常時変更が行われる」「ISVは2〜3種類のバージョンを選択し、それを固定しようとするが、別のISVが同じバージョンを選択するとは限らない」などと議論を広げる。またヒフ氏は、OSS独自の特徴ともいえる「統合性のあるアーキテクチャの欠如」や「複数の開発工程間に矛盾が生じる」といった要素が非互換性を生み出すと指摘する。

 ヒフ氏のアピールポイントを裏返せば、マイクロソフト製品の優位性となることは明らかだろう。「年間70億ドル」(ヒフ氏)の研究開発予算を確保し、長期的な視野で製品ロードマップを描くマイクロソフトのような企業にとって、OSSという在り方を完全に容認することは難しい。このことは、ソフトウェアの知的財産権とも密接に関わる問題で、少なくともマイクロソフトの基本姿勢は、ソフトウェアにおける知的財産権の徹底保護という立場であり、例えば、GPL(GNU GENERAL PUBLIC LICENSE)のようなライセンス体系を自社製品に適用することは考えられないのである。

(@IT 谷古宇浩司)

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