[Interview]
オラクルのアプリサーバはIBM、BEAの過ちから多くを学んだ

2005/3/8

 日本オラクルは2月25日にアプリケーションサーバの新製品「Oracle Application Server 10g Release 2」(Oracle AS)を発売した。Release 2としているが、サービス指向アーキテクチャ(SOA)やエンタープライズ・サービスバス(ESB)に対応し、実質的にはメジャーバージョンアップといえる。オラクルはアプリケーションサーバで先行するIBM、BEAシステムズにいかに対抗し、何を狙うのか。米オラクルのアプリケーションサーバ プロダクトマネジメント担当 シニアディレクター アミット・ザベリー(Amit Zavery)氏に聞いた。


――ESBに対するオラクルの対応は?

ザベリー氏 ESBはデータの変換、メッセージング関連を担う。データベースにおいてはキューイングのテクノロジがあり、Oracle ASでは変換のエンジンを持っている。それをBPELエンジン「Oracle BPEL Process Manager」と連携させる。Oracle BPEL Process Managerのよい点としてサードパーティのアプリケーションサーバとのやりとりが可能な点が挙げられる。オラクルのESBは、Oracle ASのほかに「IBM WebSphere」、「BEA WebLogic」で利用できる。

 Oracle ASのもう1つの特徴は、BPELのネイティブ実装だ。IBMは全面的にBPELを実装していない。BEAは独自仕様のBPELでオープンスタンダードではない。オラクルはBPELのリーダー企業だった米Collaxaを買収し、Oracle ASの一部とした。

米オラクルのアプリケーションサーバ プロダクトマネジメント担当 シニアディレクター アミット・ザベリー氏

――ESBはどのように働くのか。

ザベリー氏 基本的にはデータ通信をシステムとシステムの間で実現するサービスバスだ。例えばオラクルの業務アプリケーションからSAPへデータ転送する際に、メッセージングのインフラを活用する。メッセージングのデリバリは1回に限り保証し、データの変換も行う。ESBは基本的にはメッセージングためのバックボーンの役割を果たす。

 ESBではデータの暗号化や信頼性を確保をしながらパフォーマンスを発揮することが、差別化要因になる。オラクルはパフォーマンス向上に注力し、最高の性能を目指している。ポイントは、優秀なコードスキルと最適化の作業だ。オラクルはデータベースにおけるパフォーマンス向上を手がけてきた。豊富な知的財産もある。アプリケーション・サーバはデータベースと同じ管轄で、チーム間でアイデアをシェアしている。

――ESBは他社も出しているが競争に勝てるか

ザベリー氏 だれもが一生懸命やっている。しかし、必要なのは経験。オラクルはインフラ面で最高のデータベースを開発してきた経験がある。性能、安定性、ミッションクリティカルの対応などをミドルティアで経験を生かすことができる。しかし、BEAはミドルティア以外での経験がなく、ハイエンドに生かすことができない。Oracle ASの顧客は2万2000社を超えて、BEAを抜いた。

――成長を続けている理由は?

ザベリー氏 IBM、BEAはアプリケーションサーバで、それぞれの機能を別個に構築してきた。オラクルは彼らの過ちから学ぶことができた。オラクルが採用したコンセプトは「Application Platform Suite」(APS)。すべてがプロダクトで統合されているというアプローチだ。1つのインストール方法で、欲しい機能だけをインストールできる。APSを採用したことで、TCOをIBM、BEAの製品よりも抑えられる。Oracle ASのTCOはIBM製品、BEA製品と比べて5分の1だ。

(@IT 上島康夫、垣内郁栄)

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