パワードコムが公衆の無線IP電話開始へ、WiMAXを利用

2005/3/18

 東京電力系の通信会社、パワードコムは屋外で利用できる公衆の無線IP電話サービスを2008年にも開始する計画であることを3月17日、明らかにした。通話時間に連動しない定額料金でサービスを提供する方針で、既存携帯電話とのローミングやデータ通信の機能も搭載する。

パワードコムの専務執行役員 エンタープライズ・セールスカンパニープレジデント 野呂良材氏。無線IP電話について「企業向け、個人向けに広くオープンにしたい」と述べた

 パワードコムは2008年までに首都圏や都市部に無線IP用のアンテナを設置する。東京電力が持つ電柱にアンテナを設置する考えで、パワードコムの専務執行役員 エンタープライズ・セールスカンパニープレジデント 野呂良材氏は「都市部ならほとんどのエリアをカバーできる」と話した。アンテナはインターネットを経由せず、パワードコムのネットワークに直に接続する方式を採る。無線のエリア外では携帯電話にローミングできるようにし、通話可能エリアを確保する。

 利用する無線の通信規格について野呂氏は「最終的にはWiMAX」と説明。WiMAX(IEEE 802.16a)は通信距離が最大50キロで、70Mbpsの通信が可能。パワードコムは2005年中にもWiMAXを使った実証実験を開始する。すでに端末のベンダとも協議を始めたという。

 公衆の無線IP電話サービスは、パワードコムが考えるワイヤレス事業の第3段階目。第1段階は、2005年から2006年に開始する予定の企業内での無線IP電話サービス。第2段階はホットスポットエリアや家庭内で利用できる無線IP電話で、2006年から2007年に開始することを予定している。野呂氏は「第2段階と第3段階の通信規格は異なる。いまは設備投資の検討を始めたところ」と話した。

ネットワークのユーティリティ化を目指す

 野呂氏はパワードコムは2005年度の方針として「ネットワークのユーティリティ・サービス化がキーワード」と説明した。通信費用やセキュリティ、運用管理の手間など「ネットワークを使うときに気を使う問題を意識しなくてもいいようにしたい」(野呂氏)。

 具体的な新サービスとしては、2005年8月に広域イーサネット「Powered Ethernet」のエッジ・スイッチ、メディアコンバータを二重化する「Powered Ethernet type D」を東京23区から順次投入する。既存の顧客なら基本的に追加料金なしで利用できるようにする方針。野呂氏によると、Powered Ethernetの2004年の障害の原因は、ほとんどがエッジ・スイッチやメディアコンバータの故障。これらを二重化することで2004年度の信頼性99.999%(年間5分の停止)を、2005年度は99.9999%(年間30秒の停止)にすることを目指す。

 パワードコムは広域イーサネットの両端のインターフェイス部分だけをホストに対応させ、既存の専用線の環境と広域イーサネットを共存させる「次世代専用線」のサービスも2005年度第4四半期に投入する。レガシーな機器を残しながら、通信距離に依存しない価格体系など広域イーサネットのメリットを享受できるという。

 また、複数のサービスプロバイダが混在する環境で、ネットワークの保守・障害対応やサービスの申し込み、請求書発行などをパワードコムに一元化する「Unifyサービス」も2005年7月に開始する。IP-VPNを使ったサーバ上のデータやアプリケーションを利用するシンクライアントのサービスも2005年4月に投入。野呂氏は「2004年は対前年比で10%の伸び。中堅や公共、金融向けが伸びている」と話し、新サービスの矢継ぎ早の投入で、法人顧客のすそ野拡大を目指す考えを強調した。

(@IT 垣内郁栄)

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