個人情報保護法による“焦り”が見えた調査結果

2005/3/23

 社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)は3月22日、「企業IT動向調査」を発表した。調査は2004年10月から2005年2月まで、企業のIT部門や社内IT利用部門を対象にアンケートおよびインタビュー調査を実施したもの。アンケートの有効回答数は977社、インタビューは41社のIT部門長、20社の情報子会社、10社のシステムインテグレータに対して実施している。

JUAS 常務理事 原田俊彦氏
  調査は「企業のIT投資動向」「セキュリティ、ITリスクマネジメント」「IT利用の動向」「ITマネジメント体制」の4項目について行われた。JUASでは2005年度の重点テーマを、2007年問題などが深刻化してきている「人材育成」と、大規模プロジェクトの失敗が増えていることから「プロジェクト管理」の2点に焦点を当てているという。

 企業のIT投資動向は、「2004年度のIT投資は横ばい、2005年度への投資意欲は高い」という傾向がある一方で、JUASの常務理事 原田俊彦氏は「全体的には微増の傾向だが、IT投資を増加させようという企業と減少させようとする企業の二極化してきている」と分析。IT投資における重点課題では、利用部門の12.6%から23.5%へ急増した「業務プロセス・システム再編成」が目立った。業務プロセスの再編成に注目が集まっている点について原田氏は「もう1度システムを大幅に見直さなければ、という方向へ関心が移ってきている」と説明した。

 セキュリティ、ITリスクマネジメントでは4月に本格施行される個人情報保護法の影響から、セキュリティへの意識が増加。セキュリティへの関心が2003年の3位から1位へ上昇している。また、施行に伴い、システムリスクマネジメント体制を設立した企業が2003年の35.6%から2004年度には倍以上の83.1%に増加しており、企業の個人情報保護法対策が急ピッチで進んでいることが分かる。そのほか、「ファイアウォールやウイルス対策ソフトなどの対策は終了しているものの、“どこまでやればよいのか?”という不安を抱えている企業が多い」(原田氏)といった傾向も現れているという。

 IT利用の動向では、ホストコンピュータの削減が一段落し、サーバに移行している傾向が明らかになった。具体的にホストコンピュータの台数は2003年の前年比14.5%減から、2004年度には同10.1%減となり、減少幅が減った。一方、サーバは2003年の同59.0%増、2004年の同55.5%増と引き続き増加傾向にある。ITマネジメント体制では、「役職として定義されたCIO」が6.5%、「IT部門・業務を担当する役員」が43.9%など整いつつある。また、「半数以上の53.1%の企業が教育体系にITSSを活用する」などJUASの活動結果にも原田氏は自信を見せた。

 JUASの永田靖人氏は「今年の調査結果の目玉は、なんといってもセキュリティ意識の高まりだ」と解説。システムリスクマネジメント体制は、2003年度の35.6%から2004年度には倍以上の83.1%へ急増している点などを指摘し、「一番セキュリティ対策で先進的な金融業の場合、本体の体制や監査はほとんど終了している。しかし、このような金融業でさえも委託先からの情報漏えいを懸念しており、セキュリティへの関心がなくなることはないだろう」と分析した。

(@IT 大津心)

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社団法人日本情報システム・ユーザー協会

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