中堅企業向けに電子証明書を「切り売り」、ベリサイン新社長

2005/3/26

 日本ベリサインの代表取締役社長兼CEOに3月25日付で就任した橋本晃秀氏は同日会見し、中堅中小企業向けの電子証明書発行サービスを強化することを明らかにした。橋本氏は事業戦略について、前社長の川島昭彦氏の路線を基本的に継承するとしながらも「PKIのベンダから総合セキュリティベンダに進化するため、M&Aや業務提携についてもスピード感を持って積極的に進める」と述べた。

右から米ベリサインのCEO スクラトン・スクラボス氏、日本ベリサインの代表取締役社長兼CEO 橋本晃秀氏、前社長の川島昭彦氏

 認証局をベリサイン内に構築する電子証明書発行のアウトソーシングサービス「ベリサイン マネージドPKI」は、電子証明書500枚以上からの受付など大企業向けの販売体系で、中堅中小企業にとっては利用しづらいのが現状。橋本氏によると、ベリサインのエンタープライズ事業全体のうち、トップ20に入る大口顧客の売り上げが50%近くを占めるという。

 ベリサインは中堅中小企業にマネージドPKIを広げるため、500枚の最低販売枚数をなくし、電子証明書を「切り売り」する新サービスを2005年上半期に開始する。「中堅中小企業のニーズに応じて必要な数だけ証明書を販売することが目的だ」(橋本氏)。

 また、「中堅中小企業のWebサイトは自社運営からホスティングに移行する流れがある」との認識から、ホスティング事業者との協力も進める。ホスティングサービスと電子証明書発行サービスをバンドルしたり、オプションとする販売体系を考えている。新しい切り売りの販売モデルやホスティング事業者との協力にはパートナーとの連携が重要で、ベリサインは2005年1月に「パートナー営業部」を新設した。

 新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客のサポートにも力を入れる。橋本氏によると、2003年から2004年にかけて電子証明書発行サービスを再契約した顧客の平均は、「電子証明書で20%増の再契約」。満足度を高めて、再契約を結ぶことで既存顧客からも十分な収益を挙げられることが明らかになった。サポートの強化として、日本ベリサインは、日本人エンジニアを米国本社の開発チームに派遣して開発に参加させる試みを始めた。橋本氏は「ソースコードにも触れることができるようになった。開発段階から日本の顧客のニーズを反映させることができる」と述べた。

 ベリサインはフィッシング詐欺対策として、企業が発信する電子メールに電子署名を発行する新サービス「ベリサイン セキュアメール ID」を4月下旬に開始することも発表した。個人ではなく、企業が所有する企業名の電子メールアドレスに対して電子署名を発行するのが特徴。「電子署名でなりすましメールを防ぎ、顧客をフィッシング詐欺から守る」(ベリサイン)。

 前社長の川島氏は「ベリサインは総合セキュリティベンダへと歩もうとしている。橋本氏が社長兼CEOに就任することで、スピード感と広がりのある事業展開が図られると期待している」と新社長にエールを送った。

(@IT 垣内郁栄)

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日本ベリサインの発表資料

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