“カネのにおい”を打ち消す、新ウイルスバスター企業版

2005/4/12

 トレンドマイクロは4月11日、企業向けのウイルス対策製品「ウイルスバスター コーポレートエディション 7.0(以下、コーポレートエディション 7.0)」の出荷を5月18日に開始すると発表した。スパイウェアのリアルタイム検索機能や64bit OSに対応した点が特徴だ。

トレンドマイクロ マーケティング統括本部プロダクトマーケティンググループ プロダクトマネージャ 小林伸二氏
  2003年ころより情報漏えい事件が増加しはじめ、インターネットカフェにキーロガーを仕込み、ネット銀行から金銭を詐取した事件なども起きている。トレンドマイクロ マーケティング統括本部プロダクトマーケティンググループ プロダクトマネージャ 小林伸二氏は、「ウイルス対策は一通り行き渡った。2004年ころより、ウイルスよりもスパイウェア対策の関心の方が上回ってきた。実際にトレンドマイクロの2004年度検索キーワードランク1位は“スパイウェア”だった」と説明した。

 しかし、小林氏は「スパイウェア対策は難しい」と指摘する。なぜなら、スパイウェアは必ずしも悪ではないからだ。スパイウェアの多くは、フリーウェアやシェアウェアなどと一緒に配布されており、通常のHTTP経由でダウンロード、インストールされる。従って、サーバやファイアウォールなどで検知することが難しい。また、キーロガーのように情報を収集する機能だけしか搭載していない場合、現行法では違法ではないため、対策ソフトが一方的に削除することもできない。仕様規約に「情報を外部に送信します」と明記しているスパイウェアもあるという。

 小林氏はさらに「ウイルスはほとんどが愉快犯だ。しかし、スパイウェアは大部分が“カネのにおい”がする」と説明する。「スパイウェアの作者は、スパイウェアで収集した個人情報をフィッシング詐欺師に提供し、フィッシング詐欺師はそのユーザーからカネを吸い取るという手法が確立している」(小林氏)といった現状があるという。

 トレンドマイクロでは、「情報をインターネット経由でひそかに外部へ転送するソフトウェア」をスパイウェアと認定。新バージョンのコーポレートエディション 7.0では、スパイウェアのリアルタイム検出・駆除が可能となった。ただし、スパイウェアを駆除するためには、オプション製品の「トレンドマイクロ ダメージクリーンナップサービス」が別途必要となる。

 スパイウェアは、ウイルスなどと同様にパターンファイルを基に検知・駆除を行う。ダウンロードやCD-ROMなどからスパイウェアを検知した場合、即座に隔離・駆除を実施する。また、企業特有のソフトウェアがスパイウェアとして誤検知されてしまうことを防ぐために、駆除しないソフトウェアを登録する「ホワイトリスト」も用意した。小林氏は「今後は駆除機能を強化していきたい」と述べている。なお、トレンドマイクロは、サーバ向けウイルス対策製品「ServerProtect for Windows NT/NetWare」の販売を2005年12月に停止する。今回のバージョンよりサーバ向けのウイルス対策製品「ウイルスバスター コーポレートエディション 7.0 サーバ版」が登場するほか、いままでServerProtect特有の機能だった「TaskManager」を次期コーポレートエディションで搭載するため。ただし、そのほかのプラットフォーム向け「ServerProtect for Linux」「ServerProtect Net App」「ServerProtect EMC」の販売は継続する。

 そのほか、コーポレートエディション 7.0からウイルスのスキャンエンジンを64bit化。今年リリースされる64bit版のWindows Server 2003やWindows XPに対応する。出荷時にはItanium 2に対応し、64bit対応のAMDやXeonには6〜7月にパッチを提供して対応するとしている。小林氏は今後のトレンドマイクロの方向性として、「現在はクライアントでしかスパイウェア対策できていない。これを年内にも、ゲートウェイレベルでもスパイウェア対策できるようにしたい」と抱負を語った。

(@IT 大津心)

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トレンドマイクロ報道発表資料

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