マツダとNECがグリッド実験で目指す「ITコストの革新」

2005/5/13

 マツダのITソリューション本部 担当役員補佐役 主幹 佐伯憲彦氏は5月12日、都内で開催されたイベント「Grid World 2005」(主催:IDGジャパン)で講演し、マツダがNECと協力して進めているグリッド・コンピューティング技術を使った実証実験について説明した。佐伯氏は「ビジネスグリッドの技術ポテンシャル、とりわけITコストを革新できるかを実証実験で明らかにしたい」と述べた。

マツダのITソリューション本部 担当役員補佐役 主幹 佐伯憲彦氏

 実証実験は経済産業省ビジネスグリッドコンピューティングプロジェクトの一環で、2006年1月末まで行う予定。2004年9月から要件定義/運用設計をはじめ、現在はテスト仕様設計の段階。近く実際の実証実験に入る予定だ。

 実証実験の目的は、本番サーバ、待機サーバのリソースを柔軟に業務に割り当てて、リソースの有効活用ができるかを確かめること。マツダは国内1200の販売拠点や全国の工場が使うサーバを広島のデータセンターに統合している。実証実験ではこの本番系のデータセンターのほかに、ディザスタリカバリセンターと呼ぶ待機系のデータセンターをNECと協力して広島に設置する。

 実証実験では本番系で業務Aと業務Bを稼働。同時に待機系でも業務Aを稼働させる。待機系データセンターは一般的には平時に稼働しないが、グリッド技術を使って業務Aを割り当てることで、システム全体の稼働率が向上する。佐伯氏は「待機系のリソースを本番系で使うため、より少ないリソースでディザスタリカバリを実現できる」と説明。「待機系データセンターのボリュームの30〜50%で災害対策を行うことを目標値とする」と述べた。

 また、何らかの障害で本番系のデータセンターがダウンすると、自動的に本番系の作業を待機系データセンターに割り当て、業務Aと業務Bのすべての処理を継続できるようにする。本番系から待機系へはリアルタイムでデータをバックアップする。マツダでは、障害時に待機系に割り当てた業務が4時間以内に立ち上がることを目標としている。本番系、待機系を統合管理することで運用の効率化も図り、運用管理コストを半減、システム停止時間も従来の半分にすることを目指す。

 実証実験で対象とする業務システムは、国内の販売会社向けに新車/中古車情報、部品情報、会計などのサービスを提供する「国内販売会社店舗営業システム」と、取引先とのデータ交換などSCMのベースとして利用される「汎用データ集配新システム」。この2つの業務システムについて本番系と待機系のグリッド環境を構築し、ディザスタリカバリ、広域負荷分散、運用管理効率化の3つの観点から評価する。

 マツダはグリッド構築の前段階として広島で運用するサーバの統合を進めている。これまではアプリケーションごと、データベースごとに新しいサーバを設置していたため、その数は全体で530まで増加。「サーバの稼働率は10%程度。限界にきていた」(佐伯氏)。サーバ統合はアプリケーションの80%まで進行し、統合したサーバの稼働率は従来の2〜3倍になったという。

 佐伯氏はグリッド技術の活用で予算の80%におよぶ運用管理コストを削減し、戦略的な投資に回したいと話した。「新しい技術へのチャレンジを通してIT戦略を実現する。ビジネスグリッドに期待している」。

(@IT 垣内郁栄)

[関連リンク]
NECの発表資料(2004年9月13日)
マツダ

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