「自由な競争原理の回復を」、日本AMDがインテル提訴

2005/7/1

 日本AMDは6月30日、PCベンダのCPU採用に関連して、インテル日本法人が多額の資金提供や独占的地位を利用した圧力でAMDとPCベンダとの取引を妨害したなどとして、インテル日本法人に対して約60億円の損害賠償を求める訴訟を東京高裁と東京地裁に起こした。日本AMD 取締役の吉沢俊介氏は、「独占的地位自体は違法ではないが、われわれが危惧(きぐ)しているのはその地位を乱用し、競争を阻害すること。自由な競争原理を回復することが提訴の目的だ」などと述べた。

日本AMD 取締役の吉沢俊介氏

 AMDとインテルを巡っては、米AMDが6月28日(米国時間)、独占禁止法に違反しているとして米インテルを提訴している。今回の日本AMDの提訴も「米AMDの判断」(吉沢氏)で、提訴が別の国に広がる可能性もある。

 日本AMDが起こした訴訟は東京高裁と東京地裁の計2件。東京高裁への提訴は、2005年3月8日に日本の公正取引委員会が行った排除勧告で認定されたインテル日本法人の独占禁止法の違反行為に対する賠償請求。もう1件の東京地裁への提訴は、公取委の排除勧告で認定された違反行為以外の営業妨害行為の賠償請求が目的となっている。東京高裁での請求額は5000万ドル(約55億円)、東京地裁の請求額は東京高裁分を含んで5500万ドル(約60億円)。

 日本AMDが配布した訴状の要旨によると、インテルは東芝、ソニー、日立製作所に対して資金提供を行い、AMD製CPUをPCに搭載しないようにしたという。また、NECに対しても資金提供を行い、PCに搭載するCPUのうち、AMD製CPUの割合を10%以下にさせた。富士通に対しても資金を提供し、PCの生産計画を中止、変更させてAMD製CPUを採用させないようにしたなどとしている。

 これらAMDが主張するインテルの排除行為は、公取委が排除勧告で認定した内容。米インテルはこの勧告に対して、「勧告を応諾しますが、同委員会が主張する事実やこれに基づく法令の適用を認めるものではありません」と2005年4月1日にコメントを発表している。

 また、訴状要旨によると東京地裁への提訴の対象となる営業妨害では、インテルは国内のPCベンダに資金提供などを条件に、製品カタログやWebサイトからAMD製CPUを搭載したPCを削除するよう指示したという。また、AMDと顧客の共同プロモーション・イベント用に製造されたAMD製CPU搭載のPCを、イベント直前にインテルが全台を買い上げて、インテル製CPU搭載のPCに入れ替えさせたという。

 さらにインテルは、AMD製CPUの新製品発表会に参加を予定していた顧客に圧力をかけて、参加を辞退させたなどとしている。パソコン雑誌(すでに廃刊)の編集者に圧力をかけて、雑誌に掲載する予定だったAMD製CPUに関する記載を削除させ、性能を評価する記事内容を修正させるなどの行為もあったとしている。

 吉沢氏はインテルの営業妨害行為について、「これらは氷山の一角」と述べた。日本AMDの顧問をしている柳田野村法律事務所の弁護士 柳田幸男氏は、「インテルの独占的地位の乱用で消費者の利益が被害に遭っている。AMDが立ち上がり、インテルの乱用行為を白日の下にさらす必要がある」と述べた。

 吉沢氏はまた、「この訴訟によって(AMDの)ビジネスを好転させようとは思っていない」と述べた。「われわれはインテルよりも優れたテクノロジを持っている」と話し、ユーザーの製品選択の機会を増やし、自由な競争を回復することが目的と説明した。

 インテル日本法人は、日本AMDに提訴について「詳細を把握していないため、現時点ではコメントできない」と述べ、「今後の対応は未定」とした。

(@IT 垣内郁栄)

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日本AMDの発表資料
インテル

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