[ニュース特集:Deep Insight]
Googleが火をつけたエンタープライズ・サーチ、その可能性は

2005/7/16

 企業内のデータを検索する「エンタープライズ・サーチ」がにわかに注目を集めてきた。検索エンジンの専業ベンダだけでなく、業務アプリケーションベンダも参入する方針で、市場が一気に広がる可能性がある。エンタープライズ・サーチが求められる背景と、各社の戦略を探った。

Googleが火をつけた

 エンタープライズ・サーチが注目を集めるきっかけとなったのは、グーグルがインターネットサイトの検索エンジンを1つのサーバに格納し、オールインワンで提供する「Google 検索アプライアンス」を今年4月に国内で販売開始したことだ。もちろん、エンタープライズ・サーチ自体の市場は国内で以前からあったが、検索エンジン最大手のグーグルが本腰を入れたことで、注目度が高まった。

「Google 検索アプライアンス」の設定画面。検索結果の表示をカスタマイズできる(クリックで拡大します)

 検索アプライアンスでグーグルが強調するのは、サイト検索との共通点だ。グーグルのエンタープライズ セールス マネージャー 大須賀利一氏は「この箱(検索アプライアンス)はサイト検索のエンジンをそのまま入れている。インターフェイスもサイト検索と同じなので、企業内の利用でも即効性が高い。使い勝手が違っているとトレーニングなどのコストに跳ね返る」と語り、サイト検索と同様の操作性をアピールする。そもそも検索アプライアンスが開発されたのは、「インターネットサーチが企業内のデータでも利用できないかと、ある企業からいわれたのがきっかけ」だ。

急増する非構造化データに対応

 エンタープライズ・サーチは情報システムの側からも必要性が高まっている。ポイントになるのは、企業内での非構造化データの利用が増大していることだ。非構造化データとはテキストや電子メール、インスタントメッセージ、画像、音声、動画、CADデータなど、データベースに従来は収められてこなかったデータだ。情報システムの利用の広がりや、マルチメディア化で非構造化データは急増している。

アクセラテクノロジの代表取締役社長 進藤達也氏

 検索ソフトウェアの専業ベンダ、アクセラテクノロジの代表取締役社長 進藤達也氏は、「企業に保存されているデータの80%はテキストなどの非構造化データともいわれる」と指摘する。企業はこれらの非構造化データを管理するだけでなく、活用することを考えている。コールセンターで顧客との会話を録音し、マーケティングに活用したり、全社員の電子メールを保存し、会計監査時に利用したりだ。手っ取り早いコスト削減を挙げれば、PowerPointなどで資料を作成する際、過去に作成された同じような資料がエンタープライズ・サーチで見つかれば、資料を作成する必要がない。

 「2000年以降、業務の中で電子ドキュメントが積極的に蓄えられるようになってきた。さらにその蓄えられたデータを利用する考えが広まり、検索のニーズが出てきた。今後、企業内検索は業務の中で欠かせものになるだろう。検索はミッションクリティカルなシステムになる」(進藤氏)

EMCは新ソフト「Centera Seek」を国内出荷

 ストレージベンダ各社は非構造化データの重要性にいち早く気づき、対応製品を拡充させてきた。EMCジャパンは、作成後に変更することがないデータ「フィックスド・コンテンツ」を格納するストレージとして「EMC Centera」を2002年に発売した。EMCがいうフィックスド・コンテンツは、電子メールや月次報告書、設計図、マニュアル、医療記録などの非構造化データだ。これらのデータはこれまではテープドライブなどオフラインのメディアに保存していたが、再利用やコンプライアンスに合致したアーカイブには、「どのアプリケーションからでも迅速にアクセスできる接続性やコンテンツの正真性、効率的な管理、拡張性が求められる」(米EMCのCentera担当マーケティング・ディレクター エリック・ジャン・シュミット氏)。
 
  Centeraはコンテンツそれぞれにメタデータを付けて管理しているが、EMCはメタデータをインデックス化して検索する新しいソフトウェア「Centera Seek」を2005年度中に国内で出荷する。ストレージの管理ソフトウェアと組み合わせて、閲覧期限が切れたデータを社内から探したり、データのタイムスタンプを検索してウイルスチェックを行うなどの使い方ができる。

 Centeraの利用は「22%が電子メールのアーカイビング」(EMCジャパン CAS営業部 アカウント・マネージャー 金子剛之氏)で、米国では会計監査にエンタープライズ・サーチを利用する例がある。「企業監査や情報開示の遅れで企業が罰せられる可能性がある」といい、コンプライアンス対応のアプリケーションとエンタープライズ・サーチを組み合わせるケースが増えているという。EMC傘下のドキュメンタムもAPIを公開し、アクセラテクノロジなどの検索エンジンと連携している。

SOAの広がりで新たな検索ニーズが出現

 エンタープライズ・サーチのニーズが高まるもう1つの要因は、SOA環境の広がりだ。ヘテロジニアス環境のさまざまなシステムを組み合わせてサービスを提供するSOA環境では、情報の統合が課題になる。日本オラクルやSAPジャパンなどプラットフォームのSOA対応を進めているベンダは、マスターデータを統合するデータハブ製品を開発し、情報統合のツールを提供している。

「SAP Enterprise Portal」で表示した「TREX」の検索結果。類似語を表示できる(クリックで拡大します)

 SAPジャパンは、SOA基盤の「SAP NetWeaver」に検索コンポーネントの「TREX」を組み込んでいる。SAPジャパンのSAP EP ソリューションオーナー 上野陽示氏によると、TREXはSAPアプリケーションの構造化データ、非構造化データを対象にした検索エンジン。2000年に出荷され、2001年にはSAP Enterprise Portal 5.0の文書管理機能に統合された。「データをインデックス化して、分類するエンジンが入っている。分類により意味的な階層を構築することで、検索だけでは探しきれない情報を見つけることができる」。

 TREXはNetWeaverの「SAP Enterprise Portal」「SAP Business Intelligence」「SAP Master Data Management」「SAP Knowledge Warehouse」などで使用されていて、ポータルの統合画面から検索を利用できる。上野氏によると、SAPは今秋に出荷予定のNetWeaverの新バージョンで、TREXをSOA環境に対応させる予定だ。複数のシステムやリポジトリを接続するフレームワーク「Enterprise Search Framework」を構築し、「SOAでつながったシステム、サービスをポータルから検索できるようにする」。

 日本オラクルも企業内のデータだけでなく、Webサイトも検索できる「Oracle Enterprise Search 10g」を近く発表すると見られる。閲覧権限がないデータは検索結果に表示されないなど、企業内の利用を想定してセキュリティ機能を搭載する(関連記事)。

 「インターネットサイトの検索と異なり、企業内の検索は名簿や部品情報、ドキュメントなど確実にある情報を探さないといけない」とアクセラテクノロジの進藤氏が述べるように、エンタープライズ・サーチは「求められるものが違う」(進藤氏)。さらに非構造化データやSOA環境、セキュリティなど情報システムの進展も考える必要がある。エンタープライズ・サーチが情報システムの重要な技術要素として拡大するかは、企業の実情や情報システムの変化にどれだけ柔軟に対応できるかにかかってくるだろう。

(@IT 垣内郁栄)

[関連リンク]
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