これからは作るのではなく、買う時代〜ウインドリバー

2005/9/1

 ウインドリバーは8月31日、記者会見を開催し、米ウインドリバー 会長兼社長兼CEO ケン・クライン(Ken Klein)氏が同社のビジョンを語った。クライン氏は、2004年に発表した「DSO」(Device Software Optimization:スマートデバイス搭載ソフトウェアの最適化)の1年間の実績などを説明した。

 ウインドリバー組み込みOS「VxWorks」を中心に、ミドルウェアや統合開発環境「Wind River Workbench」を販売。2004年には組み込みソフトウェア開発における新しいビジョン「DSO」を発表し、推進している。DSOは、複数のOSやプロセッサ上で動かなければならない組み込みソフトウェアに対して、共通の開発環境やミドルウェアを提供し、より簡単・迅速に開発できる環境を提供しようというビジョンだ。

米ウインドリバー 会長兼社長兼CEO ケン・クライン氏
 クライン氏は、組み込みソフトウェアの課題として、「54%のユーザーでスケジュールの遅延が発生」「66%の企業で予算の超過」「33%のプロジェクトしか顧客のニーズを満たしていない」というアンケート結果を提示。さらに「今後5年間でネットワークに接続されるデバイスは140億台を超える」(クライン氏)と指摘し、今後組み込みソフトウェア開発件数が爆発的に増えるのに比例し、開発時間の短納期化が進むと警告した。

 さらに、競争の激化によって「短納期化」「低コスト化」「高品質化」へ対応しなければならず、より厳しさが増すと予測している。クライン氏は「コーディング量は100万ステップを超え、2年以内には倍になる。一方で、納期は4カ月だったものが3カ月に短縮することを強いられるだろう」と警告。「もはや、従来のやり方を変えなければ、対応していけないだろう」(クライン氏)と語り、DSOの必要性をアピールした。

 DSOのコンセプトでは、「標準化・共通化」「選択と柔軟性」「パートナーシップ活用」「グローバルな視点での最適解」という4つのキーワードによって、これらの問題を解決できるとしている。クライン氏は、「従来、自分たちでプラットフォームを構築していた時代は終わり、プラットフォームは買う時代に入ったのだ」と強調した。

 DSOの主要顧客は、米国ではシスコなどのネットワーク系が37%、BMWやサムソンなどの製造&自動車関連が20%、ボーイングなどの航空宇宙・防衛が24%、モトローラやヒューレット・パッカードなどのデジタルコンシューマが19%だという。一方、日本では大分数値が異なり、ソニーや松下電器産業などのデジタルコンシューマが1番多く45%、次にNECやホンダなどの自動車とネットワークがそれぞれ20%、航空宇宙・防衛が12〜15%とした。これらの顧客のうち、約70社がLinux製品を利用しているという。

 ウインドリバーでは、DSOを推進するために統合したミドルウェア群やパートナーソフトウェアなどの特定マーケット向けプラットフォームを用意。さらに、「オープンプラットフォームへ向けたリーダーシップ」や「世界レベルのサービスとサポート」「包括的なパートナーエコシステム」の3点がポイントであるとし、今後継続的にこれらを強化していくという。クライン氏は、「これらの取り組みに加え、WorkbenchやVxWorksの新製品がDSOを加速する。もはやDSOは現実のものとなったといえるだろう」と語った。

 クライン氏はDSOの今後の展開について、「1番伸びている分野はカーナビやカーインフォメーションなど、いわゆる車内向けのデバイスだ。これは自動車向けの専用プラットフォームを提供していることも要因の1つだろう」と予測した。また、LinuxとVxWorksの使い分けについては「基本的にユーザーが選ぶべきだ。機敏な動きを求められるデジカメではVxWorksが向いているし、スイッチなどではLinuxの方が向いているだろう。それぞれ向き不向きがあるので、ユーザーがそれを考慮して選択すればよいと考えている」と説明。DSOの浸透具合については、「当初、DSOを提唱しているのは当社だけだったが、ガートナーは1つのカテゴリとして認知しているほか、協調する企業も増えてきた。コンソーシアムを作る必要はなく、ユーザーニーズがあれば、必然的に利用する企業が増えるだろう」(クライン氏)との考えを明らかにした。

(@IT 大津心)

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