Salesforce.comの新サービスは“iTunes+eBay”

2004/9/14

米セールスフォース・ドットコム CEO マーク・ベニオフ氏

 米セールスフォース・ドットコムは9月12日(現地時間)、米サンフランシスコでプライベートイベント「Dreamforce '05」を開幕。米セールスフォース・ドットコム CEO マーク・ベニオフ(Marc Benioff)氏が、新サービス「the Appexchange」を発表した。ベニオフ氏はthe Appexchangeを、「iTunesとeBayを融合させたようなサービスだ」と例えた。

 ベニオフ氏はまず、同社の業績を発表。2005年度第2四半期の売り上げは前期比77%増の7190万ドル、利益は同331%増の500万ドルという。ユーザーも1万6900社まで増加し、ユーザー数の増加に比例して、ページビューやAPIトランザクションも13億ページビューまで急増している。しかし、さまざまな施策を行った結果、平均的な反応スピードは上昇しているという。

 ベニオフ氏はセールスフォースがいままで提供してきたサービスをレベル別に例え、最初に提供したSalesforceやSupportfoceを「レベル1=アプリケーション」として、レベル2にはワードやエクセルなどほかのアプリケーションとの「インテグレート(融合)」を挙げた。レベル3には2004年から提供を開始したカスタマイズ機能を、レベル4にはパートナーが作成するソリューションとして「エコシステム」を、レベル5には2005年の「Summer '05」から提供し始めたmultiforceの「プラットフォーム」を挙げた。

 このように、Salesforce.comのサービスは年の経過とともに機能のレベルアップが図られているという。そこでベニオフ氏は「次のレベルのオンデマンドプラットフォームには何がくるべきか」と考えたところ、「エンタープライズアプリケーション版のeBayのようなものがあり、ユーザーがエンタープライズアプリケーションを売買したり、シェアしたりできたら素晴らしいのではないか」や「エンタープライズアプリケーション版のiTunes Music Storeはどうだろうか」という考えに至った。こういった同氏の考えに基づいて新サービス「the Appexchange」を作成したという。

新サービス「the Appexchange」

 the Appexchangeは、Salesforce.comのユーザー自身が作成した約70種類のアプリケーションなどを売買できる場だ。パートナーやISV、デベロッパーが独自に作成したアプリケーションが登録してあるほか、セールスフォース・ドットコム自身が作成したものも掲載されている。すでにプレビューサイトが開設されており、無料で同サービスやアプリケーションを試用できる。正式サービスは、2005年11月〜12月に開始予定。正式サービス開始時には、パートナーが作成したアプリケーションは有料で販売する予定だ。

 登録されているサービスは、試しに利用することも可能であり、「iTunes Music Storeのように、欲しいサービスを検索し、試してみて気に入ったら購入することができるようになっている」(ベニオフ氏)という。「SALES」や「SERVICE & SUPPORT」「TOOLS」「MARKETING」「FINANCE & ADMINISTRATION」「NON-PROFITS」「HUMAN RESOURCES」「INDUSTRY SOLUTIONS」の8種類のカテゴリ別に分類されており、サービスの検索なども可能だ。また、カテゴリ別に表示されているサービスはランキングされており、人気があるサービスが上位に表示されるようになっている。

 the Appexchangeで購入したサービスや機能は、即座に自分のSalesforce.comのアカウントにインストールされ、利用することができるという。ベニオフ氏はthe Appexchangeについて、「いままでに、多くのベンダがCustomforceなどを用いて自分や顧客のためにSalesforce.comが提供していない機能を作成してきた。従来であれば、その機能を自分自身や顧客が利用して終わりであったが、その機能を広く一般に売ることができる場を提供できた。これにより、いままでSalesforce.comがターゲットしていなかったより幅広い客層にアプローチできるようになる」と語り、今後一層Salesforce.comのユーザーが増えるだろうと予測した。

Winter '06の新機能を6つのステップで説明

 最新バージョンのWinter '06は、the Appexchangeの正式サービスと同時に2005年11月〜12月に登場予定。前回のアップデート「Summer '05」で登場したプラットフォーム「Multiforce 1.0」を「Appforce」に変えて提供する。ベニオフ氏は、Winter '06の新機能を6つのステップで説明した。

 1つ目のステップは、新しいインターフェイスとブランドだ。Winter '06では、インターフェイスを全面的に変更。ただし、古いインターフェイスも「Classic User Interface」として選択できる。ベニオフ氏はインターフェイスを変更した理由を「顧客からのフィードバックが主な理由だが、the Appexchangeとの連携からも必要だった」と説明した。ブランドも、プラットフォームを「Appforce」に、交換サービスを「the Appexchange」に、サポートサービスを「Successforce」に、アプリケーション群を「Salesforce」に変更した。

 ステップ2となるCRM関連の新サービスでは、社員ごとに定められた機能や情報を提供する「テリトリー管理機能」やキャンペーン対象のユーザーを簡便に管理できる機能、ユーザーの症状などに合わせて適切な解答を提案する機能、コールセンターの回答者ごとにカスタマイズできる「Agent Console」機能などが搭載された。ステップ3のモバイル関連機能では、Webブラウザではなく「Outlook」上でsalesforce.comを利用できるOutlookエディションや、データ容量の制限なしにオフラインで利用できるオフラインエディションなどが機能強化された。

 ステップ4の新しいプラットフォーム「Appforce」では、顔写真などのイメージ関連機能強化や、ワンクリックで保護された領域「Sandbox」上でテストできる機能、データミラーリング機能の強化などが挙げられた。特にデータミラーリング機能では、5000万ドル投資してデータセンターを開設。現在では米国の西海岸2カ所、東海岸1箇所の計3カ所でミラーリングするようになり、ディザスタリカバリング能力が向上したとしている。

 そのほか、ステップ5の「Successforce」では、新しいワークショップやトレーニングプログラムの提供や新しいサポートパッケージを提供する。ステップ6にはパートナー企業が作成したアプリケーションを売買できる「the Appexchange」を挙げた。これらの6つすべての機能強化によって、「salesforce.comというオンデマンドサービスが次のステップに上がり、Winter '06のサービスレベルが新しい基準として認知されるだろう」と語り、salesforce.comが新しい次元のオンデマンドサービスとしてユーザーに認知されることになるだろうと宣言した。

(@IT 大津心)

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