“オンデマンドWindows”になりたい、セールスフォース

2005/9/15

 米国サンフランシスコで開催中の米セールスフォース・ドットコムのプライベートイベント「Dreamforce '05」。2日目の9月13日(現地時間)に同社 シニア・バイスプレジデント マーケティング ストラテジー&プロダクトマネジメント ティエン・ツォ(Tien Tzuo)氏に話を聞いた。

 ツォ氏は、設立間もない1999年の夏にセールスフォース・ドットコムに入社。現在はマーケティング担当シニア・バイスプレジデントとして、製品戦略とロードマップの策定を統括している。


――新サービス「the Appexchange」のリリース経緯は? 今後「the Appexchange」に何を期待するか?

ツォ氏 Appforceを発表したように、現在当社はプラットフォームに注力している。特に、“アプリケーションや情報をシェアできる”というインターネットの利点を活用したソリューションを提供し、オラクルなどと差別化を図りたかった。このことから、the Appexchangeのリリースに至った。

米セールスフォース・ドットコムのシニア・バイスプレジデント−マーケティング ストラテジー&プロダクトマネジメント ティエン・ツォ氏

 the Appexchangeに期待するのは、すべてのアプリケーションをオンデマンドで提供する、という環境を実現することだ。現在、salesforce.com自体はSFAやCRMなどのアプリケーションを提供しているが、そのほかのアプリケーションは提供できていない。SAPのような巨大企業であっても、1社ですべてを提供するのは不可能だ。このような発想の下、当社が提供できないアプリケーションをパートナーやベンダに提供してもらい、補完関係を構築していきたい。

 iTunesで例えると、iTunesというプラットフォームと一部の楽曲は当社が提供するが、そのほかの無数の楽曲はパートナーなどに提供してもらうことになる。当社のプラットフォーム上ですべてのユーザーニーズを満たしていきたい。

――the Appexchangの料金体系は。

ツォ氏 the Appexchangは、あくまでアプリケーションを提供する場を提供するだけ。そこでもうけようとは考えていない。従って、当社がthe Appexchang上で提供するアプリケーションや、パートナーやベンダがthe Appexchangにアプリケーションを登録する費用、売れた際のマージンは取らない方針だ。パートナーやベンダは任意に価格を設定して販売できる。Windowsプラットフォームにおけるアプリケーションと同じ発想だ。WindowsユーザーはPhotoshopを買った際にはアドビ システムズに料金を支払い、マイクロソフトに手数料は払わない。the Appexchangでも同様だ。

 the Appexchangによって利用できるアプリケーションが増えることで、ターゲットユーザーが拡大し、その結果salesforce.comユーザーが増えることが、われわれの利益につながるという考えで運営していく。

――今後、「the Appexchange」においてさまざまなアプリケーションが提供されると予想される。パートナー企業が提供するアプリケーション機能が、今後のsalesforce.com自身のサービスと競合することはないか?

ツォ氏 競合する可能性は十分にある。競合したとしても、どちらを選ぶかはユーザー次第だ。当社のアプリケーションも、パートナー企業のアプリケーションも選択の1つだ。

 今後は、ユーザーニーズを満たすためのアプリケーションを当社だけが提供するのではなく、数千のパートナーが数千のユーザーニーズを満たすために機能を提供するようになるだろう。当社は、そのプラットフォームを提供していく。

――前回のバージョンアップ「Summer '05」でリリースされたばかりの「multiforce 1.0」が、今回「Appforce」にリブランディングされました。なぜですか?

ツォ氏 前回のバージョンアップによって、multiforceやcustomforce、supportforce、sforceなど、**forceが多数存在していたため、ユーザーの混乱を招いてしまった。それを反省し、今後はWindowsプラットフォームの「Windows Server」や「Windows XP」のように、Appforceに統一していく。

――Winter '06でインターフェイスが一新されました。その理由は。

ツォ氏 使いやすさを優先した結果だ。ユーザーコミュニティや当社のブログ上でいくつかの案を出し、ユーザーから最も支持されたものを採用した。the Appexchangeの登場によって、今後さまざまなアプリケーションが登場するが、それらに対応するためでもある。

 今回のインターフェイスでは、Windows Media Playerのようにスキンを変えることができる。現在は2種類だけだが、今後さまざまなスキンが登場し、ユーザーが選択することができるようになるだろう。

――オラクルによるシーベル買収についてはどのように考えているでしょうか。

ツォ氏 当社は古くから「ソフトウェアの時代は終わった」と叫んでいるが、昨今のパートナー企業の動きを見ても、ソフトウェアビジネスからオンデマンドビジネスに移行している企業が多い。このことからも、時代はオンデマンドビジネスに移行しているといえる。

 このような理由から、オラクルのようにオンデマンドビジネスに移行しきれていない企業は時代の流れに着いていけずに淘汰(とうた)されていくだろう。

――日本ではシステムインテグレータ(SIer)の影響力が米国よりも強い。一方、ASPはSIerに利益を提供しにくいサービスだといわれている。このような環境下でSIerには、どのような提案をするのか?

ツォ氏 当社のパートナーであるアクセンチュアは、the Appexchangeの登場を好意的に受け止めている。なぜなら、the Appexchangeで自社開発のアプリケーションを幅広く販売できるからだ。

 the Appexchange登場後のSIerは、専門にしている業界を縦割りに担当していくだけではなく、会社規模や地域など、従来とは異なる切り口の顧客企業にも挑戦できるようになるだろう。例えば、これまで金融業界に特化していたSIerは、今後“大企業向け”といった切り口でのサービス提供も手掛けなければならなくなる。SIerは、SOI(サービス・オリエンテッド・インテグレーター)になるべきである。

――今後のsalesforce.comの戦略を教えてください。

ツォ氏 the Appexchangeの発表によって、当社はプラットフォームビジネスにも注力していくことになった。今後当社は、プラットフォームビジネスと従来のオンデマンドアプリケーションビジネスを50:50の割合で注力していくつもりだ。

(@IT 大津心)

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