迷うラリー・エリソン、「次世代アプリで非オラクルDBの対応は」

2005/9/23

 「オラクルは将来の統合アプリケーション『Fusion Application Suite』でOracle Database以外のデータベースをサポートするのかどうかを決定しないといけない。どうするかはフィフティ・フィフティ。どちらに転ぶか分からない」。米オラクルのCEO ラリー・エリソン(Larry Ellison)氏は9月21日(米国時間)、「Oracle OpenWorld」の基調講演で、オラクル以外のデータベースを次世代の統合アプリケーションで将来サポートする可能性を示した。データベースはオラクルの根幹であり、競争力の源。エリソン氏は「顧客と長期にわたり話し合って決めたい」として顧客の意見を広く聞いたうえで決定することを説明した。

米オラクルのCEO ラリー・エリソン氏

 Fusion Application Suiteは、「Oracle E-Business Suite」と買収したピープルソフト製品、JDエドワーズ製品、リテック製品、買収を進めているシーベル製品などを統合して2008年に発表する予定の次世代アプリケーション。ピープルソフトやJDエドワーズ、シーベルは買収前、IBM DB2、Microsoft SQL Serverなどオラクル以外のデータベースもサポートしていた。このサポートはオラクル買収後も変わらない。また、買収したi-flexやリテックもDB2のサポートを表明している。しかし、統合製品のFusion Application Suiteで、DB2やSQL Serverをサポートするかどうかはエリソン氏も決めかねている。

 エリソン氏が迷っているのは、オラクルが投資の保護や選択肢の保護など顧客中心の考えを強く打ち出しているからだ。SOA基盤のミドルウェア群「Oracle Fusion Middleware」は業界標準技術に基づき開発し、オラクル以外の製品コンポーネントと組み合わせて使えることを保証する「Hot Pluggable」を採用すると発表している。エリソン氏も講演で「アプリケーションと組み合わせる場合、Oracle Fusion Middlewareのコンポーネントではなく、IBM WebSphereのコンポーネントを使いたいのであれば、使える」と述べ、他社製品と共存する姿勢を示している。オラクルは次世代アプリケーション向け製品としてIBM WebSphereを認証することも9月19日に発表した。

 オラクルとしてはデータベース層、ミドルウェア層、アプリケーション層のうち、ミドルウェア層は他社製品が混在しても構わないという考えだ。「すべてが同等であれば、できるだけたくさんの選択肢を顧客に提供したい」(エリソン氏)。しかし、データベース層で他社製品の使用を認めるかはオラクルにとって難しい問題。投資の保護や選択肢の提供を最優先するなら、他社データベースの使用も認めざるを得ない。ピープルソフトやJDエドワーズの顧客でDB2などを使っているケースが多いからだ。エリソン氏は「現在、DB2やSQL Serverを使っているピープルソフトやJDエドワーズの顧客と話をして、なぜDB2、SQL Serverを選んだのかを聞いている。今後のデータベースの課題についても話し合っている」と述べた。

 エリソン氏は今後24カ月のオラクルの注力ポイントとしてセキュリティとビジネス・インテリジェンス(BI)を挙げた。エリソン氏は「セキュリティのリスクが深刻になってきている」と指摘し、データベース内の暗号化や侵入検知機能の組み込み、VoIPのセキュリティ対策が重要と訴えた。BIでは業種ごとに求められるアルゴリズムをデータベースに組み込む「Deep Industry Functionality」に注目する考えを示した。

 講演の来場者からは、MySQLなどオープンソースで開発されたデータベースについての質問があった。エリソン氏は「LinuxなどはオラクルやIBM、ノベルなどが投資をして、エンジニアがコードを書いている。このような業界サポートで成功した」と指摘。一方、オープンソースソフトウェア(OSS)のデータベースは「業界のサポートを受けていない」として、Oracle Databaseへの脅威にはならないとの考えを示した。

(@IT 垣内郁栄)

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