【特報】「一太郎」訴訟でジャストが逆転勝訴、松下の特許を「無効」と判断

2005/10/1

 ジャストシステムの「一太郎」「花子」に自社が保有する特許を侵害されたとして、松下電器産業が両ソフトの製造・販売の差し止めなどを求めた訴訟の控訴審判決が9月30日あった。知的財産高裁の篠原勝美裁判長は特許権侵害を認めた一審の東京地裁判決を取り消し、ジャスト側逆転勝訴の判決を言い渡した。ジャストは「非常に公正で妥当な判決。われわれの主張が全面的に通り、喜んでいる」とコメントした。

 高裁判決で篠原裁判長は、松下が特許出願する前に刊行された海外の書籍などの内容を検討したうえで、「本件特許出願当時、ヘルプを得るためのアイコン、すなわち、機能説明を表示させる機能を実行させるアイコンも、既に公知の手段であったことが認められる」と指摘し、特許の“進歩性”を否定。

 さらに松下の特許は「周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明に係る本件特許は、特許法29条2項に違反してされたものであり、特許無効審判により無効にされるべきものと認められるというべきである」として、特許自体が無効に当たるとの認識を示した。判決は結論で「松下はジャストに対し、特許権を行使することができない」とし、松下側の請求を棄却した。

 一審の争点となったのは、ソフトウェアのヘルプボタンをクリックした後、別のボタンをクリックすると、その機能の説明を表示する「バルーンヘルプ」機能だった。松下は「アイコン」を使った同様の機能を1989年に特許出願し、1998年に登録されていた。一方、ジャストは1996年発売「一太郎7」以降のシリーズと、花子で同機能を採用。一太郎、花子の機能が「アイコン」を使っているかどうかの判断が一審のポイントになっていた。だが、高裁判決は特許自体を無効と判断した。

 松下は判決について「控訴理由に対する当社の反論が認められず、高裁で新たに提出された資料により、特許無効の判断が示されたことは、大変残念」とコメント。「今後の対応については、判決の内容を詳細に検討した上で、決定する」としている。

 2005年2月1日の一審判決は、一太郎、花子の両ソフトの製造販売停止と廃棄を命じる内容でIT業界に強いインパクトを与えた。ジャストは2月8日に控訴。控訴審は2005年4月に設立した知的財産高裁で行われた。知的財産高裁は重要な争点が含まれるとして裁判官5人による「大合議」で審理していた。

(@IT 垣内郁栄)

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判決文
知的財産高裁
ジャストシステム
松下電器産業

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