TBSと世界に通用するメディアを作りたい〜楽天三木谷会長

2005/10/14

 楽天は10月13日、東京放送(TBS)の普通株式2938万株(全体の約15.46%)を880億円で取得し、TBS経営陣に対して共同持株会社化を通じた統合の申し入れを行ったと発表した。楽天 代表取締役会長兼社長 三木谷浩史氏は、「TBS社長と話し合いを行った。先方は驚いていたが、検討して頂けることになった」とコメント。同氏は、「申し入れが受け入れられれば、放送とインターネットのシナジーが期待でき、世界に通用するメディアに成長できる」と、統合後の夢を語った。

楽天 代表取締役会長兼社長 三木谷浩史氏
 楽天がTBSに行った提案は、共同でTBSグループと楽天グループをまとめる持株会社を設立し、グループ統合するというもの。持株会社の持株比率や社長の人選などの詳細はまだ考えていないという。三木谷氏は、この計画を「2004年8月ころから検討し始めていた」とし、フジテレビやテレビ朝日などのほかのテレビ局なども検討した結果、TBSの「技術力」や「コンテンツ」「報道に強い」点などを考慮し、TBS株の取得を決めたという。株の購入資金は楽天のグループ内から調達し、楽天ストラテジックパートナーズと楽天メディア・インベストメントの子会社2社を通じて市場から購入。今後の株の買い増しやTOBの実施については、「現時点では考えていない」(三木谷氏)とした。

 また、ライブドアがニッポン放送の買収を試みたときと同じように、話し合い以前に株を購入した点については、「TBS経営陣との話し合いの中で、先方には『突然の株購入で驚かして申し訳ない』と謝罪した。しかし、株取得はセンシティブな問題なので、取得前に公表することはできなかった。TBS経営陣との話し合いは20分強におよび、先方には真摯な姿勢で話を聞いて頂いた。また、両社トップが在席している中で検討することを表明して頂いた。当社としては、今後も協議を続けていきたい」(三木谷氏)と語った。

 同氏は今回の提案を「世界に通用するメディアグループを設立するため」(三木谷氏)であると強調。高い影響力を持つが収益率の低いTBSと、高い成長率と収益率を持つ楽天が統合することにより、高い影響力を持ち、収益性も高いメディア構築が可能だと説明した。統合後は、シナジー効果によって広告価値が向上するほか、ブロードバンド配信なども行えると説明。「TBSのコンテンツを楽天グループで動画配信を行っている『ShowTime』で配信したり、グッズを楽天市場で販売するといった具体案なども検討している」(同氏)と説明した。

 楽天とTBSの売上高の差がある点について、同氏は「楽天は高い成長率を誇っていることから、統合しても決して楽天が足手まといになることはないと自負している」と述べている。また、同氏は海外メディアと比較して日本のメディアの規模が小さい点を指摘。海外メディアのタイムワーナーを例に出し、「タイムワーナーは4.6兆円を超える売上を誇っている。日本のメディアは、フジテレビで5000億程度だ。TBSと当社の統合で世界に通用するメディアを作りたい」と抱負を語った。

 また、統合によって、TBSのステークホルダーである著作権者や視聴者、広告主、株主、従業員にそれぞれメリットがあると説明。楽天にとっては、「現在のリーダーであるYahoo!を超えるNo.1ポータルサイトへ近づける道であるほか、TBS保有コンテンツのブロードバンド配信などブロードバンド事業の強化も図れるため、多くのメリットがある」(三木谷氏)と述べた。

 一方、両社が統合すると、TBSが筆頭株主である横浜ベイスターズと、楽天が筆頭株主である楽天ゴールデンイーグルスの2チームを、統合した会社が持つことになる。この点については、「もし、TBSが今回の提案を受け入れてくれたらコミッショナーと話し合いたいが、現時点では詳細までは考えていない」(三木谷氏)との説明で終わった。

(@IT 大津心)

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楽天の発表資料

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