2009年の日本版SOX法への対応費用は7000億円

2005/11/11

 IDC Japanは11月10日、“コンプライアンス時代における企業ビジョンの方向性”をテーマにしたプライベートイベント「Japan e-Document Platform Vision 2005」を開催。IDC Japan リサーチバイスプレジデント 佐伯純一氏が「日本版SOX法とITへのインパクト」と題した講演を行った。

 佐伯氏は講演の中で、すでにSOX法(サーベンス・オクスリー法)が施行され先行する米国市場の状況を紹介。米国での展開を参考に、日本でも2008年にも施行される予定の「企業改革法」(日本版SOX法)のITへの影響度を展望しつつ、日本版SOX法の市場規模を予測した。

IDC Japan リサーチバイスプレジデント 佐伯純一氏
 佐伯氏は、1970年代〜1980年代のメインフレームや1990年代のネットワークなどのインフラの整備によって、「便利さに比例してリスクも大きくなっている」(佐伯氏)と指摘。企業統治への関心が高まっているとした。すでにSOX法が施行されている米国の状況からは、SOX法施行のメリットとして「業務プロセスの見直し」や「手作業だった監査を自動化」「財務記録を徹底的に残す」といった点を挙げた。特に法令順守は、企業にとってミッションクリティカルである点が重要だという。

 米国ではSOX法への対応によって、全社にわたる業務プロセスの見直しが行われ、プロセス改善のよいきっかけになったケースもあったが、法律の施行に間に合わせることが先決になり、企業価値向上は先送りされたケースも多かったという。コスト面では、当初の見積もりを超える場合がほとんどだったほか、直接的には財務部門が対応したため、ITの重要性が看過される傾向があり、後でやり直すケースもあったという。また、アウトソーシングしている企業では、アウトソーシング先の監査にも対応しなければならず、負荷があったとした。

 佐伯氏は、このような米国の実情を基に日本のケースを想定するに際し、前提条件として、「当面、日本のIT投資の伸び率が極めて低いというトレンドは変わらない」「日本版SOX法の施行は2008年と仮定し、2006年から対応が始まり、2007年がヤマとする」「ITへの直接投資は2007年までは限定的で、当初はビジネスコンサルティングが中心となる」「企業のコンプライアンスへの理解や、有効なツールが出そろう2008年以降に企業統治に必要なITへの投資が立ち上がる」の4点を挙げたほか、分野別では、ストレージやサービス、セキュリティ、ネットワークが中心になるとした。

 上場企業の取り組みレベルでは、9割以上の企業が法律内容が確定した段階から作業を始め、従業員300名以下の企業では98%が後手に回ると予測した。また、日本版SOX法関連のIT投資の84%は日本版SOX法の内容が規定された1年後に発想し、法律実施1年前がピークになると推測した。IT投資全体では2004年〜2009年の間、年率1.7%の成長で推移し、2009年には10兆円に達すると予測。そのうちの7%に当たる7000億円が日本版SOX法対応に費やされるとした。

 日本版SOX法への対応を年別に見ると、2005年は一部の企業が対応しているがまだまだな状態で、2006年〜2007年から一気に加速。この時期は、半分がポリシー策定などのビジネスコンサルティングで、半分がIT投資に費やされるという。日本版SOX法関連ソフトウェアへの投資は2007年をピークに以降減少し、2008年以降は企業統治に向けたIT投資が増加するとした。

 最後に佐伯氏は、「法令の内容によりIT投資規模は左右され、特にITへの監査ルールが大きく影響する」と指摘。「日本版SOX法に直接かかわる投資は2007年が中心となり、2008年以降はメンテナンスフェイズに入る。また、2009年にはIT投資全体の7%が日本版SOX法関連に回され、特にITインフラの整備に多く費やされる」と予測した。また、ベンダへの助言として、「SIerは、エンドユーザーよりも先に取り組んで成果を出しておくことが重要だ。従来はビジネスコンサルティングとITコンサルティングは別々に考えられていたが、日本版SOX法の施行は、両者を統合する良いチャンスだ。ビジネスコンサルティングはITコンサルティングを、ITコンサルティングはビジネスコンサルティングへ参入するチャンスだろう」と語った。

(@IT 大津心)

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