あなたの“怒り度”や“キレ度”が測定できるCRM

2005/11/12

 アデコとメッセージワンは11月11日、メッセージワンが開発した感情解析技術を利用したコールセンター向けのシステム「コミュニケータプラス」に関してのサービスを提供すると発表した。このシステムは、コールセンターにかかってきた通話音声をリアルタイムで解析し、ユーザーとオペレーター双方のストレスレベルを測定可能で、顧客満足度などを図る指標として、今後CRM業界へ定着させていきたいという。

アデコ 代表取締役社長 上里正明氏
 アデコはスイスに本社を置く総合人材サービスの会社。約5万人が人材派遣で就労しており、そのうちの約1割強になる5500人がコールセンター関連事業に就いているという。同社自身も池袋に200席のコールセンターを持っており、スーパーバイザー育成やCS(顧客満足)やES(従業員満足)を研究しているという。アデコ 代表取締役社長 上里正明氏は、「通信事業者の増加や外資系金融業者の加入など、コールセンター市場は拡大しており、当社のテレマーケティング就労者も現在の5500人から3年間で1万人まで増やしたい。しかし、現在のCRMのCSや従業員の労務評価は『科学的でない』ことが悩みだった。コミュニケータプラスによって、この部分を解消したい」と今後の意気込みを語った。

 メッセージワンは2001年創業のベンチャー企業で、Web会議システムや映像プレゼンテーションソフトなど、映像や音声を使ったシステム開発を主に行っている。今回の両社の協力関係では、メッセージワンがコミュニケータプラスの販売を行い、アデコがコミュニケータプラスの利用方法などのコンサルティング業務などを担う。

 メッセージワン 代表取締役社長 河野雅郎氏は、「コミュニケータプラスを開発したことで、音声会話という“ボヤっ”としたものを解析できるようになった。しかし、製品をユーザー企業に持ち込むと『解析した後、どう活用すればよいのか分からない』という答えを頂いた。このことから、CRM業務に詳しいアデコと協力し、コンサルティング業務などをアデコに頼むことになった」と経緯を説明した。

 コミュニケータプラスは、コールセンターにかかってきた会話をリアルタイムに分析し、「快/不快」という話者のストレス度合いを定量的に評価する感情解析エンジンだ。会話内容の意味を把握する音声認識技術とは異なり、あくまでも感情の起伏や緊張度のみを測定する。具体的には、話者の基本音声の周波数である「ピッチ」や、音声の「スペクトラム」「音圧」「発話速度」「会話の間(ま)」「イントネーション」「レスポンスタイム」などを測定し、発話者が快適に話しているのか、不快に話しているのかを判別する。

コミュニケータプラスでの解析結果。右側にストレス度合いがメーターで表示されている。不快度が高いものは赤色のメーターで表示されるので一目で分かる
 具体的には、コールセンターに必ず設置されている録音装置「ロガー」と連動させて音声解析を行うほか、オペレーターの座席の下に心拍数や呼吸の様子を非接触形式で測定できる装置を設置し、それぞれの情報を合わせて解析を行う。解析結果のデータは、データベースに蓄積し、それ以降の分析時に参考として利用するという。これにより、使えば使うほど、判定精度も上がるとしている。リアルタイムで測定できるため、通話当初は怒っていた顧客が終了時には満足しているケースや、逆に通話途中で怒らせてしまうケースなども時系列に沿って分かる。このシステムによって、「終話時に不快度が高いユーザーがいた場合にはマネージャにアラートが送られ、マネージャによる即時のアフターフォローが可能」といった応用方法もできるという。

 用途には、上記のようにリアルタイムの顧客満足度測定やアラート機能のほか、電話オペレーターの蓄積ストレスを定量的に計測することで、勤務時間やフォローなどのストレスマネジメントにも役立てることが可能だ。また、サポート開始時と終了時のユーザーのストレス度合いを測定することで、オペレーターの客観的な評価や教育に役立てられるとしている。導入費用は、初期費用が約100万円で、利用料が1シート当たりの月額利用料を2500円程度になる予定だ。

 コミュニケータプラス導入により、CSやESの定量的/客観的な評価がある程度可能になる。その一方で、その定量的なデータをどのように利用すればよいのか分からない企業がほとんどだという。そこで、アデコが自社のノウハウをベースとして、コミュニケータプラスの有効な活用方法やデータの活用方法など、全般的なコンサルティング業務を担う。また、メッセージワン コミュニケータプラス担当マネージャ 法村ひろし氏は、「まだ、コミュニケータプラスは製品として不完全な部分もあるので、あらかじめアデコのコールセンターに導入し、使いながらレベルを上げていきたい」と説明した。

(@IT 大津心)

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