「アプリ事業の成否を決める」、オラクルが大企業向け新戦略「Oracle EO」

2005/11/29

 日本オラクルは「Oracle E-Business Suite」を短期間、低コストで導入する大企業向けの新ソリューション「Oracle Enterprise Offering」(Oracle EO)を発表した。企業の業種別に標準的なビジネスフローを用意し、ウィザードに従うだけでEBSを最適な形で導入できるようにする。オラクルは21社のパートナーと組み、14業種向けのソリューションを開発していく。

 日本オラクルの代表取締役社長 新宅正明氏はオラクルのアプリケーション事業について「特にやらないといけないのは新規ライセンスの獲得。顧客の投資動向が激変する中でどう対応するかが問われる」と説明。そのうえで「Oracle EOで業種別ソリューション導入の時間とコストを下げていく。これから2年半を見るとOracle EOの対象領域はアプリケーション事業全体の半分以上を占めるようになる。Oracle EOはオラクルのアプリケーション事業の成否を決める」と述べた。

会見した日本オラクル経営陣とパートナー各社の担当者。写真左は日本オラクルの代表取締役社長 新宅正明氏

 オラクルは、業種別のテンプレートを提供する中堅企業向けのOracle NeOなど、EBSで企業規模別のソリューションを展開している。売り上げが3000億円以上の大企業向けと位置付けるOracle EOの特徴は「標準のビジネスフローにフォーカスしたこと」(日本オラクル 取締役副社長執行役員 インダストリー&アプリケーション事業統括 東裕二氏)。導入企業は採用したいビジネスフローを選ぶだけで、「オラクルによる業種別の“標準的な製品の使い方”をベースにしたビジネスフローの提供」を受けることができる。これまでのEBSの導入では、導入企業自身がEBSのモジュールや機能を選択する必要があったが、Oracle EOはビジネスフローに注目することで、よりビジネスの視点でITを導入できるようにする。

 業種別ソリューションに含まれるビジネスフローは、オラクルと21社のパートナーが開発する。「欧米型だけでなく、日本オラクルのこの5〜6年の経験をベースに日本企業向けの標準のビジネスフローを提供する」(東氏)。オラクルは業種別ソリューションの共同開発でアビーム コンサルティング、金財総研、日本ケミカルデータベース、ベリングポイントなどと協業した。4社と共同でハイテク・製造業向けや小売業界向け、銀行業界向け、化学業界向けなどのソリューションを開発する。ビジネスフローに注目したソリューションだけでなく、SAPやISVなど他社のパッケージソフトウェアとのデータ連携を図り、マスターデータを統合するデータハブソリューションも提供する。

 Oracle EOのビジネスフローは、Oracle EOの技術基盤「Oracle Accelerators」が提供する。Oracle Acceleratorsは、ウィザードベースでビジネスフローを導入できるツール。「ビジネスフローの構築に必要なEBSのモジュールを意識する必要はない。ウィザードに答えるだけで、オラクルが最適なモジュールを選んで、Oracle Acceleratorsでパラメータを設定する」(日本オラクル アプリケーションソリューション本部 本部長 石川正明氏)という。「ビジネスフローと(ウィザードの)セットアップツールが対になっているのがOracle Acceleratorsの特徴だ」(同氏)

 オラクルがアピールしたいのは、Oracle Acceleratorsを使うことでEBSを短期間、低コストで導入できるようになること。石川氏は「複数製品に渡るセットアップ作業、工数が削減できる」としたうえで、「オラクルの調査によると、ERPの導入コストのうち6割はプロダクトの導入費用で、4割がアドオンの開発費用。Oracle Acceleratorsを使うことでプロダクトの導入費用を半分にし、トータルの導入コストを30〜40%削減できる」と説明した。Oracle Accelerators自体の利用は無償。企業はEBSのライセンス料だけでOracle Acceleratorsを利用できる。オラクルは中堅企業向けのOracle NeO、中小企業向けの「Canon Decision Suite」に対してもOracle Acceleratorsを今後適用していく方針。

 米オラクルは業種、業務別に240のビジネスフローをOracle Acceleratorsで提供できるようにしている。日本オラクルはその中から日本企業に提供できるビジネスフローを選定中。100種類程度が候補に上がっていて、2006年1月末までに10ソリューション、3月までに10ソリューション、5月末までに10ソリューションの計30ソリューションを用意する計画。自動車部品関連のビジネスフローの提供がすでに決定しているという。

 オラクルはOracle EOを推進する専任組織を5〜6人体制で12月1日に発足させる。発足後1〜2カ月で十数人体制にして、プリセールスや開発など他部署と連携するコアとして機能させる。

(@IT 垣内郁栄)

[関連リンク]
日本オラクルの発表資料

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