台頭する中国とインド、日本企業がオフショアで利用すべきは

2005/12/2

 「コスト削減効果やオーバーヘッド、品質、納期などを疑問視する向きもあるが、オフショアで企業の競争優位が高まるかというと、答えはイエス」。ガートナージャパンのガートナーリサーチ ITマネジメントグループ 主席アナリスト 足立祐子氏は12月1日、自社のイベント「Symposium/ITxpo 2005」で講演し、オフショアの有効活用を訴えたうえで「成功のためにはオフショアの最適な形態を採用するなどの3大条件が重要だ」と指摘した。

ガートナージャパンのガートナーリサーチ ITマネジメントグループ 主席アナリスト 足立祐子氏

 中国ソフトウェア業界協会やNASSCOM、JETROなどのデータからガートナーが推測する日本企業のオフショア利用の規模は2004年で1204億円。足立氏によると日本のITサービス市場は8兆円。組み込みソフトウェア開発などを合わせると10兆円を超えると見られるので、オフショアの規模は「まだまだ小さい」。しかし、その分だけ「今後も成長の余地が多く残されている」という。

 日本企業のオフショアの利用では中国が圧倒的に多く、2004年の推計では896億円。インドは278億円。フィリピンやタイ、台湾、オーストラリアなどのその他の国へが30億円となっている。中国のオフショアでは、組み込みソフトウェア開発の委託が多く、全体の半数を超えて53%。業務アプリケーション開発(24%)とビジネスプロセス・アウトソーシング、情報処理(23%)が続く。

 一方、インドは業務アプリケーション開発が40%を占め、次いで組み込みソフトウェア開発(34%)、ヘルプデスク、アプリケーション運用(26%)となっている。インドの場合は欧米グローバル企業の利用が多く、その企業の日本法人が発注しているケースがあるという。足立氏は日本企業のオフショアの利用について、「劇的に増加することはない。委託する国や内容もそれほど変らないだろう。ただ、全体のボリュームは着実に増える」と予測。特に日本企業が効果を上げられる開発として、ソフトウェア製品開発、アプリケーション開発、情報処理、海外拠点のインフラ基盤運用を挙げた。

 オフショアの企業が集まるとして注目される中国とインドだが、その内実は大きく異なるようだ。中国企業がクライアント/サーバ環境やWebアプリケーション、カスタム・アプリケーションの開発を得意とするのに対して、インド企業はメインフレーム環境の開発が得意。エンタープライズ・パッケージの導入や金融、保険など業種特化型業務パッケージの開発も行う。足立氏によると、インドにはかつてIBMが拠点を置いていたが、インド政府の外資規制によって一時的に撤退。その後、IBMのメインフレームをインド企業が運用、開発したため、メインフレーム環境に対するノウハウが蓄積されたという。

 日本企業の利用でも中国、インドは違いがある。中国企業は強い価格競争力があり、日本企業との取引に対する意識も高い。しかし、中小規模の企業が多くて高い品質のサービスが長期にわたって維持されるか不透明という面がある。足立氏によるとオフショア開発を受託する中国企業の7割は従業員50人以下だという。一方、インド企業は従業員が1000人以上の大規模企業が中心。財務的な安定感はあるが、顧客の中心は欧米企業で、日本企業に十分なリソースが割り当てられるかが課題になる。足立氏によると、オフショアを受託するインド企業の売り上げうち、95%は欧米企業からの売り上げで、日本企業からは4%程度。「第一線のエンジニアは欧米企業に振り分けられ、日本へのコミットメントが期待できないかもしれない」という。

 中国企業、インド企業は開発のスタイルも異なっている。ガートナーの調査によると、中国企業の関与は詳細設計、コーディング、単体テストが中心。統合テストはユーザー企業と協力して一部実施するが、要件定義や基本設計などには関与しない。ユーザー企業側の要件定義、基本設計に従って開発するスタイルのため、「ウォーターフォール型開発でないと難しい」と足立氏は指摘した。対して、インド企業は要件定義や基本設計から開発にかかわるケースが多い。日本に設立した支社を活用し、オフサイトで請け負う。開発中心は中国企業と同じ詳細設計やコーディング、単体テストだが、上流工程にも一部かかわるため、「ウォーターフォールの呪縛を解くことができ、品質を確保しやすい」と足立氏は見る。

 足立氏は日本企業がオフショア開発で成功するための条件を3つ上げた。「最適なオフショアリング形態を採用する」「委託先の見極めを厳格に行う」「委託先に対するガバナンスの確立と維持に注力する」の3つだ。

 足立氏は「最適なオフショアリング形態を採用する」として、オフショア開発の形態を5つに分類した。初期コストがかからず、日本企業が取り組みやすい順に、オフショア専門のグローバル・サービスプロバイダへの委託(1)、現地ITサービスプロバイダにオフショア拠点の設立、運用を委託し、安定稼働後に買い取るBOT(Build-Operate-Transfer)方式(2)、現地ITサービスプロバイダへの資本参加(3)、ジョイント・ベンチャーの設立(4)、自社の開発センターをオフショアに設立(5)となる。(1)は初期コストは少ないが、ユーザー企業がコントロールすることが難しい。(5)はコストはかかるが、完全にコントロールできるなど、形態によって影響力、コントロールも違ってくる。

 成功条件の2つ目、「委託先の見極めを厳格に行う」では、ユーザー企業がオフショア実施前に、委託先の人材育成、管理手法体制や、人件費や物価上昇に対するリスクヘッジ計画があるか、セキュリティ意識は高いか、日本企業への親和性があるか、などをチェックすべきと指摘した。3つ目は、オフショア実施後の「委託先に対するガバナンスの確立と維持に注力する」。コスト効果を出し、品質を保つために委託先に対してユーザー企業が継続的に十分な発注ができているかや、委託先のモチベーションを維持できているかなどがユーザー企業の確認項目。足立氏は「オフショアの成功は、受託側だけの努力で達成されるものではない。委託側も常に改善が求められる」とした。

(@IT 垣内郁栄)

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