ウインドリバーのマーケティングは“iPodと同じ”

2005/12/2

 ウインドリバーは12月1日、同社の組み込みOS「VxWorks 6.2ベースWind River Platform」と、開発環境「Wind River Workbench 2.4」向けツール2製品を発表した。米ウインドリバー プロダクトプランニング&マネージメント担当副社長 ジョン・ファネリ(John Fanelli)氏は、VxWorks 6.2の強化点として「セキュリティと各人ごとに設定できるプロファイル」を挙げた。

米ウインドリバー プロダクトプランニング&マネージメント担当副社長 ジョン・ファネリ氏
 ウインドリバーは2004年に組み込みソフトウェア開発における新しいコンセプト「DSO」(Device Software Optimization:スマートデバイス搭載ソフトウェアの最適化)を打ち出して推進している。DSOは、複数のOSやプロセッサ上で動かなければならない組み込みソフトウェアに対して、共通の開発環境やミドルウェアを提供し、より簡単・迅速に開発できる環境を提供しようというものだ。

 ファネリ氏は、2004年から2005年における組み込みOS市場を「全体で16〜20%増加する」(ファネリ氏)と予測。2004年と比較して、自社開発が2004年の37%から2005年には24%に減少し、その分商用Linuxが13%から26%へ倍増している。

 一方で減少した自社開発のシェアについてファネリ氏は、「これは企業の組み込みOSへ開発リソースを投入するよりも、OSは当社のような専門ベンダに任せ、自社リソースをその分アプリケーション開発に回した方がよいことに気付いたからだろう。これは当社が以前から訴えていた考え方だ」との考えを示した。また、同社の商用Linuxのシェアでは、2004年の5%から39%へ増加しており、「商用Linuxと商用RTOS(リアルタイムOS)のシェアが50%から76%へ拡大した。このシェアを利用して標準化を進めたい」とコメントした。

 また、同氏は組み込みOS市場の要件が流動的に変化している点を指摘。「分かりやすい例はiPodだ。iPodはshuffle、nano、videoと次々と新製品を投入して顧客ニーズを満たし、3カ月程度の短い期間で製品をリニューアルしている。当社は半年に1回のリニューアルだが、基本的なコンセプトは同じものと考えている」(ファネリ氏)との考えを示し、「現在多くのユーザーが組み込みOSへ求めているものは、技術だけでなく商用ならではの高い信頼性だ」と説明した。

組み込みOSのシェア
 今回発表したVxWorks 6.2ではこのユーザーニーズに応えるために、セキュリティと高可用性に注力。セキュリティ面では、OSカーネルのコア部分からネットワーク部分に至るまで、ファイアウォールや802.11i、SSL、IPsecなど多くのセキュリティモジュールを用意して強化したという。また、デバイスごとに異なる環境に対応するためにコンフィグレーションプロファイルを用意して自由度を広げた。例えば、情報家電のような36Kbytes程度しか容量を確保できないデバイスでの開発環境と、ルータのような大型のアプリケーション容量を備えるデバイスの開発環境ではまったく環境が異なる。従って、新バージョンでは、それぞれ異なったプロファイルを開発者が選択できるようにしたという。ファネリ氏は、「Yahoo!やAOLなどのポータルサイトの『Myページ』の便利さを、開発者は開発環境に求めている。今回はその要望に応えた形だ」と説明した。

 ファネリ氏はまた、組み込み開発のポイントとして「開発ライフサイクルにおけるバグの早期発見と修正」を挙げ、「開発段階で見つかった不具合は60ドルのコストで直せるが、品質保証の段階だと1000ドル、ユーザーの利用現場までいってから見つかると直すのに1万5000ドル必要になってしまう」(ファネリ氏)と語り、その理由を説明した。このバグの早期発見と修正に効果を上げるのが、同社が新しくリリースした開発環境「Wind River Workbench 2.4」向けのテストツール「Workbench Unit Tester」と診断ツール「Workbench Diagnostics」だ。

 Workbench Unit Testerは、テストケース生成やテストの実行、レポート作成を自動的に行うツール。ソースコードを解析してテストを自動的に作成したり、ウィザード形式によるテストスクリプトの自動生成が可能だ。これにより、手間をかけずより多くのパターンをテストでき、早い段階でのバグ発見に貢献できるとした。ファネリ氏は、「テストには開発者がかかわらなければならないが、大体開発者はテストには興味がないものだ。テストを自動化して開発者の負担を減らすことで、開発者が開発に専念できる環境を作ることができる」とコメントした。

 Workbench Diagnosticsは、デバッグとコンパイルサイクルの作業軽減を目的としたツール。開発やテスト段階で障害を記録し、問題の切り分けや診断・修正へつながる動的な診断ができる点が特徴だ。また、開発中に再コンパイルをせずに稼働中システムの動的デバッグが可能。再現性が低いシステム障害に対してデバイスレベルでの科学的な検査や解析も行えるとしている。ファネリ氏は、「Workbench Diagnosticsは、科学警察が捜査において、科学的に弾道の角度や飛んできた方角などを分析する作業に似ている。科学的に調査して、バグの原因を調査するのだ。このような機能がソフトウェア品質に対して大きく貢献するだろう」と語った。

(@IT 大津心)

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